マルチスピード化する世界の中で 途上国の躍進とグローバル経済の大転換 マイケル・スペンス著/土方奈美訳 ~変化を促す政策こそ成長の源泉

マルチスピード化する世界の中で 途上国の躍進とグローバル経済の大転換 マイケル・スペンス著/土方奈美訳 ~変化を促す政策こそ成長の源泉

評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト

多くの人にとって、ニューノーマルとは、世界金融危機後の米欧の低成長の継続を示す。バランスシート調整が完了するまでは、いくら財政・金融政策を行っても成長を高めることはできない。多くの場合、大規模な信用バブルの調整完了には、10年近い歳月を要する。しかし、本書が示すニューノーマルは、50年後の世界の姿である。今後も新興国の高成長が続くことで、現在の世界人口の15%を占める先進国の人々が享受する豊かな生活を、50年後は世界の75%の人々が獲得するようになる。

本書は、情報の経済学で2001年にノーベル経済学賞を受賞した著者が、現在進行中の世界経済の構造変化を包括的に論じたものである。18世紀半ばに英国で産業革命が始まった後、最初の200年は工業化の進んだ国とそれ以外とで格差が広がった。しかし、1950年頃から流れが変わり、世界経済の開放と先進国からの知識や技術移転によって、途上国に持続的な高成長がもたらされ、収斂が始まる。最も早く高所得国へ移行した日本は、収斂の先駆けだったのである。21世紀半ばに中国とインドが高所得国に達した段階で、収斂はほぼ完了するという。

新興国の成長の源泉が世界経済へのアクセスであることは言うまでもないが、より重要な点は、高成長国では変化を促す政策を政府が積極的に採用していることだ。賃金が上昇すると、労働集約的産業は国際競争力を失い低賃金国に移転し、国内では人的資本集約型産業や知識集約的産業にシフトせざるを得ない。これまで雇用を創出してきた産業が縮小することを恐れ、保護政策を取る国では、中所得国から高所得国への移行に失敗する。韓国や台湾は、むしろ構造変化を促進する政策を断行し、持続的な高成長を獲得した。

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