花王、アキレス腱の化粧品を立て直せるか 業績好調の中で目立つ不振

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そして2006年、事業の歴史、売上高でも「先輩」のカネボウ化粧品を4100億円で買収。「研究の花王」と華やかなメーキャップ商品に強い「感性のカネボウ」の”二刀流”で、化粧品事業は花王の成長ドライバーとなるはずだった。しかし、同事業の売り上げは2007年度がピークで、のれん代償却も重く、営業損益は赤字が続く。

澤田社長が「研究者として見て、周りに素晴らしいブランドがたくさんできた。その結果、当社のブランドの特徴が出にくくなっている」と分析するように、不振の背景には競争環境の変化もある。

ロート製薬が機能性化粧品の市場で台頭し、富士フイルムが2007年に「アスタリフト」を発売するなど、花王の”研究立脚路線”は珍しいものではなくなっている。業界内では、多様なターゲットに向けラインを広げたことで、ソフィーナのブランドイメージをぼやけさせることになったという見方もある。

「原点回帰」で巻き返せるか

8月26日に開いたソフィーナの新ライン発表会。澤田社長はこの場で、スキンケア化粧品の刷新も明らかにした。

今回の新ライン発売で花王が重視するのは原点回帰。年間約250億円を投じる基礎研究の知見を生かした「科学の花王」をアピールし、ブランドイメージを磨き直す。旗艦店をオープンするのもその一環だ。並み居るライバルの中で、存在感をどれだけ発揮できるかが勝負所だろう。

現在、ソフィーナの売上高は約700億円で、日本に加えてアジアを中心に海外展開を強化し、「できるだけ早く1000億円を目指したい」(澤田社長)という。それだけに今後は、ソフィーナのさらなる展開も予想される。また、2016年度にはカネボウのリニューアルを控えており、来年秋にはスキンケア化粧品の刷新も予定している。”全面刷新”の皮切りとなる看板ブランドの新展開は、不振の化粧品事業を立て直すうえで、失敗の許されない取り組みとなりそうだ。

(撮影:尾形文繁)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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