パナソニックにすべてを結集して世界で勝つ

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--社名変更発表の年頭会見で、「ノスタルジーよりも、成長する可能性に懸ける」とおっしゃった。
 
私自身、松下電器に入社し、松下の社員であることに誇りとプライドを持って働いてきた。当然、名前にものすごい愛着がある。しかし、その松下という名前に浸って、三つのブランド・社名を引っ提げたままで、本当にグローバルに戦っていけるのか。答えは違う。本当に今、われわれの世界はまさに総力戦で、知恵と努力と戦略、組織力、あらゆるものが試される競争なんです。そういうことを考えれば考えるほど、パナソニックへの集中が必要だと。

 事業で言いますと、たとえば、家丸ごと、ビル丸ごとといった松下グループが持っているシステムを、全体ソリューションとして提供しましょうと。快適生活実現事業と呼んでいるんですが、こういったものを(松下)電工と電産(松下電器産業)がナショナルとパナソニックでやっているかぎり、正しい方向へ全員の力が結集されにくい。しかも事業はたぶん日本国内にとどまってしまう。

 これをパナソニックという一つのブランドにすると、今までのように国内だけでよいのか、われわれは何のためにパナソニックにしたんや、グローバルで成長するためやないかと。そうやって事業の足場がおのずと国内から世界に広がるんですよ。しかもブランドもパナソニック一つになることで、電工も電産もないと。

--社名変更、ブランド統一に当たり、どんなリスクやデメリットを想定されましたか。
 
 今、電産、電工の合計で、ナショナルのブランドは約1兆3000億円の売り上げがある。それだけ、ナショナルというブランドを支持してくれているお客さんが、国内にたくさんいらっしゃる。国内の専門店(ナショナルショップ)の方は特に愛着があるでしょう。そのブランドを変えるというのは、やはり大きなリスクです。
 それと、松下幸之助という”経営の神様”の会社だというイメージで、特に年配の方は松下という社名にも愛着があると思う。それを横文字に変えるということに対して、アンチ松下という方が出てこられるかもしれない。もちろん、そういうリスクはすべて事前にまな板の上に乗せて検討しました。これから、細かく十分に手を打っていくつもりです。
 
--創業家の松下正治名誉会長と松下正幸副会長への説明も、大坪さんの仕事だったわけですね。
 
 当然、名誉会長にも副会長にも私が事前に説明にいきました。1955年に、松下は初めてパナソニックというブランドを使ったんです。当時、ナショナルという商標はアメリカですでに存在していたので、ナショナルが使えず、パナソニックという新しいブランドを考えて輸出したのです。名誉会長は当時の苦労話をされて、松下の歴史の中で、そうしたいろいろな苦労があったのだから、経営の中でよく咀嚼してより大きなものを生み出しなさいと。そういったご指摘をいただきました。
 
 副会長は事業部長や宣伝事業部長を経験されてますから、ご自身もブランドに関する課題認識がつねにあったと。ほかに創業者の経営理念の扱いについて、ご質問がありました。

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