第1回
国勢調査って、そもそも何?
国勢調査は国家にとって最も重要なデータ
今年9月上旬から10月下旬にかけて、国勢調査が実施されます。この国勢調査は、総務省統計局が国内に居住するすべての人及び世帯について調査し、人口や世帯の実態を明らかにする、いわば日本という「国の情勢」がわかる統計データです。
国勢調査によって得られた人口の調査結果は、多くの法令・制度の算定基準となる「法定人口」として用いられ、政治や行政などの公的な目的のほか、民間企業の経営判断や大学の研究活動などに広く活用されています。
例えば、政治・行政では、地方交付税の配分や衆議院議員選挙区の区割りなどの基準となったり、企業では、市場規模や需要動向の見積もり、出店戦略を立てる場合の人口構成や地域分布の統計データとして用いられます。大学や学術研究機関でも、社会や経済の動向を分析する目的で国勢調査の統計データが活用されています。
さらに「労働力調査」「家計調査」「国民生活基礎調査」などの標本調査を設計する際の、基礎データとなる「フレーム」として用いられたり、将来人口推計の基礎データとしても活用されるため、日本の統計体系の基盤を支えるものとして、国勢調査は国家にとって最も重要なデータであるとされています。
この国勢調査は、「人口センサス」とも呼ばれます。国連統計委員会の勧告を受け、世界のほとんどの国で実施されています。調査事項も国連から国際基準として提示されているため、各国の調査結果をもとに国際比較されるなど、世界的な規模で実施されているものなのです。
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第1回の国勢調査は1920年
では、いつから日本で国勢調査が始まったのでしょうか。その答えは、1920年(大正9年)。この年に第1回の国勢調査が行われて以来、5年ごと、つまり西暦が5の倍数の年に実施されるようになりました。2015年の今年、国勢調査は20回目を迎えます。
実は日本で第1回国勢調査が実施されるまでには、多くの紆余曲折がありました。
国勢調査の実現にあたって、とりわけ尽力したのは明治の統計学者たちでした。その発端は、今から約180年前。欧米で近代統計学が成立した1830年代まで遡ります。当時生まれた統計学は、世界的に新しい学問であると同時に、社会を数量的に把握する革新的な学問でした。
こうした動きに触発され、日本で初めて近代的人口調査に着目したのが、1828年に長崎で生まれた蘭学者、杉亨二でした。もともと幕臣で開成所の教授を務めた杉は数字で社会を分析する統計学の魅力にとりつかれたのです。杉は明治維新以降、統計学者のグループをつくり、それが日本の統計学の始まりとなっていきます。