ビジネスリーダーが“KBS”を選ぶ理由 KBS〈慶應義塾大学大学院経営管理研究科〉
1962年に設立された日本でもっとも歴史のあるビジネススクール
「経営学」を名に冠した大学の学部や大学院は珍しくない。
「慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)は、これらの『経営学』を教える学部や大学院とは大きく異なります。本校の大きな特長は、ビジネスリーダーや経営リーダーを育成することを使命と考えて、それを実現するための教育プログラムや教員をそろえていることです。さらに、研究機関として、経営の意思決定や経営のプロセス、その背後にある理論体系などを研究して、成果としてまとめるとともに教育にフィードバックしています」と、同研究科委員長兼慶應義塾大学ビジネス・スクール校長の河野宏和教授は力強く語る。
その背景には、KBSがこれまで培ってきた歴史と実績がある。
KBSは1962年、「経営専門家の養成教育実施」を目指す、日本初の大学ビジネススクール「慶應義塾大学ビジネス・スクール」として創立された。さらに78年には修士課程を、91年には博士課程を開設している。
日本の企業や組織では、長期雇用を背景に、「経験」を積み重ねて管理職や役員などに昇進する例が一般的だ。たとえば、「○○さんは、営業部門、経理・財務部門、人事部門などを歩んだ後、海外勤務も経験している。年齢としても、そろそろ社長にふさわしい」といった表現を聞くこともある。だが、それについて河野教授は次のように指摘する。「経営は過去の経験だけで行えるものではありません。リーダーシップや意思決定、自社が置かれている環境の把握、さらには資金や人材のリソースの活用など、経営に求められる理論体系を学び、知識として身に付けた、専門的な経営者が必要とされています」
河野教授によれば、欧米の大手企業や有名ベンチャー企業の経営者のほとんどは、ビジネススクールなどで経営の専門的なトレーニングを受けているという。今後、日本のビジネスリーダーが、このような経営者たちと伍していけるかと問われれば、心もとないと言わざるを得ない。
「慶應型ケースメソッド」をはじめ質の高い教育を実践
前述したように、OJTベースの、経験を重視する日本の企業や組織では、専門的な経営者を育成するのは難しい。その課題を解決するために、KBSは早くから独自の教育方法を開発し実践してきた。
「本校の最大の特色とも言えるのが、『慶應型ケースメソッド』です」と河野教授は紹介する。
学生がケース(実際の企業や組織が直面する経営課題を記述した教材)を事前に読み込んだ上、各人の分析結果や意思決定の内容、その理由を教員のリードのもとで発表し、議論する授業形式である。
今では、ケースメソッドを授業に取り入れるビジネススクールも増えているが、これを日本に初めて導入したのはKBSだという。ケースメソッド授業のポイントは、学生が自ら考えること、すなわち自ら経営視点での意思決定が求められる点だ。
「経営とは意思決定にほかなりません。新商品を出すのか出さないのか、投資をするのかしないのか、組織を変えるのか変えないのか。それぞれの意思決定は単独ではなくさまざまな領域に影響を与えます。もちろん、マーケットや競合他社の動向も変化するでしょう。経営者は、これらのさまざまな分析や判断を、分野横断的に行わなければなりませんが、『慶應型ケースメソッド』ならば、一つの学問領域だけではなく、複数領域を同時に学び、意思決定力を鍛えることができるのです」(河野教授)。