相続特集

今から準備するわが家の相続

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今年1月の税制改正で相続税の非課税枠となる資産の基礎控除が縮小された。また、最高税率も引き上げられた。課税対象者が増加し、これまで相続税とは無縁だった人たちにも影響が及ぶとも言われる。実際のところ、改正のポイントはどのような点なのか。また「相続は“争続”」とも言われるように、遺産分割はトラブルになりやすいが、これを防ぐためにはどのような準備が必要なのか。大蔵省(現・財務省)および国税庁での長年のキャリアを持ち、文京学院大学大学院で教鞭もとる、税理士の内野正昭氏に解説してもらった。

2015年1月の税法改正も影響を受ける人は意外に少ない

内野 確かに、今回の相続税の改正により、一定の資産までは課税されない基礎控除が4割削減されました。また、最高税率は50%から55%になりました(6億円超の場合)。

ただし、国税庁の発表によれば平成24(2012)年中に亡くなった人(被相続人)は約126万人で、このうち相続税の課税対象となった人は約5万2000人で、課税割合は約4.2%にすぎません。これが1.5倍になっても6%程度です。つまり、ほとんどの人が課税対象にならないわけです。

さらに「小規模宅地等の特例」もありますので、「相続税を払うために、現在居住している自宅を手放さなければならないのではないか」といった心配もほぼ無用です。

課税対象者が拡大するという情報だけにまどわされずに、正しい知識を得て落ち着いて対処してほしいと思います。

―「小規模宅地等の特例」の制度を利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

内野 「小規模宅地等の特例」は、個人が相続などにより取得した財産のうち、事業用の宅地や居住用の宅地は、一定の限度面積までの部分について、相続税課税評価額を減らすことができる制度です。前述したように、生活の維持や事業の継続に必要な宅地等の基盤を守るのが目的です。

文京学院大学大学院教授
内野正昭税理士事務所所長
税理士
内野 正昭
昭和43年東京大学経済学部卒業、大蔵省入省後、大阪国税局調査部国税調査官等を経て、東京国税局査察部長、福岡国税局長、国税庁調査査察部長、課税部長、国税不服審判所次長を歴任。平成12年税理士登録。公認会計士試験委員、文京学院大学大学院教授(現任)を務める

たとえば居住用の宅地の場合、330平方メートルまで評価額が8割減額されます。これまでは、適用面積は240平方メートルまでだったのですが、今回の改正により引き上げられました。「小規模宅地等の特例」を利用すれば、評価額1億円の宅地でも、特例による減額で2000万円の部分にのみ課税されることになります。お父様が亡くなってお母様が相続する場合、よほどの豪邸でもない限り、「配偶者の税額の減税(1億6000万円)」の範囲に収まるのではないでしょうか。

ちなみに、改正により面積以外の要件についても緩和されています。これまでは、玄関が別々にあったり外階段のような独立型の宅地は二世帯住宅でも適用されていませんでしたが、改正後は適用されるようになりました。また、親が介護施設などに入所しているような場合でも、自宅を貸していなければ適用が認められるようになりました。

ただし、注意しなければならないのは、「小規模宅地等の特例」は相続税の申告が必要なことです。明らかに納税額がゼロという場合でも、申告書を提出し、特例選択の意思表示をしなければ、そのメリットを受けることはできません。

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