松下、YKK、大震災 街の電器屋は逆境で育つ--ケーズホールディングス会長 加藤修一《下》

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松下、YKK、大震災 街の電器屋は逆境で育つ--ケーズホールディングス会長 加藤修一《下》

ヤマダの出店は、ケーズにも大きな影響を与えた。というのも、ヤマダの価格攻勢に耐え切れず、一部のチェーンがケーズに駆け込み始めたのだ。中京・東海圏のギガス、関西圏の八千代ムセン電機、中国・四国のビッグ・エス、東北の北越電機が、次々とケーズへ傘下入り。看板を「ケーズデンキ」に塗り替えた。

07年には、東北で高いシェアを握るデンコードーも子会社化。「加藤さんが結婚しませんか、と執拗に迫ってきた」とデンコードー社長の井上は振り返る。

加藤は恐れていた。「ヤマダがデンコードーに買収を仕掛けている」とのうわさが流れていたのだ。さすがにこのとき、「ヤマダとこれ以上、規模が開くと大変だな」と考えた。どうしてもデンコードーと組みたい。ケーズが組みたがっているとメーカーや関係者に伝えてもらった。

勝算は、何となくあった。「客観的にそれがいいと周囲が思えば伝わるだろう」。ヤマダの独り勝ちを懸念する周囲の後押しが、多少なりとも働いたことは否定できない。

デンコードーと一緒になったことで、業界4位にのし上がった。全国区となったことで、出店攻勢の体制は整った。売上高7700億円規模になった今なら、年40~50の出店ペースでも“安定成長”が守れる。ヤマダが「安売り」で攻勢をかけるなら、ケーズは「安売りと親切」を武器にしよう。

東日本大震災で店舗の4分の1が被災

その矢先、3月11日に東日本大震災が起こった。デンコードーの宮城県名取市の本社は崩れ、仙台市で無事だったのは太白店のみ。休日だった社員が一人、津波で亡くなった。

水戸の本社も大変だった。停電で電話もつながらない中、西日本の店舗では通常どおりに売り上げが積み上がっていく。POSシステムが停止しては発注もできず、どうしようもなかった。グループ約357店(当時)のうち100店が被災した。

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