中国の「中南海」では何が行われているのか 広さディズニー2個分、知られざる権力の中枢

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中国の人事といえば、「太子党vs共青団」という単純な対立構図を描きがちであるが、「太子党」(高級幹部子弟)にあっても、下放仲間(文革時の農村派遣)や中学・高校(高級幹部子弟学校卒が多い)の同級生などの関係を視る必要がある。「共青団」(共産主義青年同盟─共産党員予備軍)といっても、中央と地方の出身あるいは大学、企業などの出身もあり、一律に論じるわけにはいかない。

主要業界に見る人事の「制度性」と「政治性」とは?

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実は、最近になって、中国国有企業の人事が盛んに行われているのをご存知だろうか。中国の場合には、国有企業と党・政府は一枚岩であり、西側諸国における企業人と政府との人事関係とは異なる。

中国の国有企業大手のトップは大臣級であり、その人事は党中央組織部(人事を所管とする)が任命する習わしである。

その人事決定は、年齢制限(企業トップは地方行政長と同じく、「65歳」)、企業内昇格、所管官庁からの就任などの「制度性」に基づく決定と、異業種ないし地方党委員会や地方行政責任者の就任や抜擢人事という「政治性」の2つの人事決定方式に基づくものと推定される。

では、最近の主な業界の人事を例にみてみよう。

自動車業界で行われた中国流“たすきがけ人事”

 吉林省副書記、元第一汽車の董事長(代表取締役)であった竺延風(じくえんぷう)が、日産自動車の提携先の東風自動車の董事長として、自動車業界に復帰した。一方、第一汽車の競合相手であった東風汽車の董事長であった第一汽車の徐平が東風汽車のトップに就任するという、中国流の“たすきがけ人事”が行われた。

きっかけとなったのは、第一汽車の徐建一(1953年生)が腐敗容疑により解任されたことによる。竺延風は徐建一の前任者であり、一時は疑惑の一人と噂されたが、吉林省副書記から8年ぶりに自動車業界に復帰した。党務、行政職から企業のトップに就任する例は珍しくもない。その場合、その企業の本社所在地である地方の党務職ないし行政職に就くケースが多い。

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