中国の自動車メーカーが「PHV強化」を急ぐ背景 EVの減速を尻目に販売好調、競争激化は必至か

✎ 1〜 ✎ 166 ✎ 167 ✎ 168 ✎ 最新
拡大
縮小

PHVはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド機構をベースに、電池だけを動力に使う純電動走行や外部電源からの充電にも対応している。純粋なEVにつきものの電池切れの心配がないほか、エンジンを燃焼効率が最も高い回転域で運転できるため、トータルの燃費も優れている。

BYDはエントリークラスのPHVの価格をエンジン車並みに引き下げ、人気に火をつけた。写真は同社の低価格PHV「秦PLUS DM-i」(BYDのウェブサイトより)

そうした長所を中国の消費者に知らしめた先駆者は、EVの最大手でもある比亜迪(BYD)だ。同社の2023年の販売台数は、EVが157万4800台だったのに対してPHVが143万8100台に肉薄。同年に中国市場で販売された全てのPHVの51.3%を占めた。

ここに来てPHV強化を打ち出すメーカーが相次ぐ中、BYDは守勢に回るどころか、競合他社をさらに突き放す構えだ。

最大手BYDは42万円値下げ

BYDは既存車種に年次改良を施した「2024年モデル」を2月から順次発売しており、それらの価格を2023年モデルより平均2万元(約42万円)以上も引き下げている。

本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

同社の祖業は電池であり、車載電池の部材から完成車まで自社で一貫生産できる「垂直統合モデル」を築き上げた。最大手の規模がもたらすスケールメリットも加わり、コスト競争力では他社の追随を許さない。

それだけではない。BYDの創業者で董事長(会長に相当)を務める王伝福氏は、2023年の通期決算の説明会で、同社の第5世代のPHVプラットフォームを5月に発表すると明らかにした。このプラットフォームを採用した新型車は、車載電池とガソリンタンクが満タンの状態から最大2000キロメートル走行できるという。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月1日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT