名経営者が「利益に直結しない」話をしたがる事情 起業界隈にあふれるポジショントークを疑え

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起業界隈では、人によって「これが大事だよ」というメッセージが変わります。そう、ポジショントーク(自分に都合がいい発言をすること)です。このせいで目標がブレてしまい、何を信じればいいのか、何をすればいいのか混乱してしまうのです。

その典型例が「ビジョン」です。

ビジョンは、「こんな会社になります」「こんな社会を実現します」といった、将来のありたい姿や実現したい社会を表し、従業員や取引先、顧客といった利害関係者に発信するためのものです。したがって、ビジョンの策定が大事だといわれれば、そのとおりだと納得するでしょう。

ところが、もし最初にビジョンを決めようと力を注いでいるとしたら、失敗への第1歩を踏み出したといっても過言ではありません。

ビジョンでは飯が食えない

ビジョンといえば、ベストセラー『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズ)が有名です。多くの人に読まれたこの本ではビジョンの重要性が語られています。

あまりに名著とあがめられているためか、その権威を利用してビジョンの重要性を説く人が多いように思います。でも、稼ぐというゴールを見据えたとき、ビジョンの策定ははたして優先的に取り組まなければならないものでしょうか。

質問を変えましょう。ビジョンでメシは食えるでしょうか。

起業志望者は、何か聞こえのよい(けどフワッとしている)メッセージやアドバイスに注意を払わなければなりません。お金を稼ぐことに直結しない行動をしてしまいます。

イエローハットの創業者の鍵山秀三郎さんは、社内のトイレを自身で洗うことで有名で、きっかけや効果などをメディアで語っています。事実、同社の躍進を支える重要な要素であるのは疑いようがありません。

ところが、起業志望者がそれに感化されて同じ行動をしてしまったら、遅かれ早かれつぶれていくでしょう。いくらトイレを掃除しても、売り上げは上がりません。

イエローハットと、起業したばかりの小さい会社では立っているステージがまったく違うので、取るべき行動が異なるのは当然です。

ビジョンや経営理念は稼いで(しっかりと地に足を付けて)からの話で、最初はドライに徹して稼ぐ。そこが見えていないと、泥沼にはまってしまいます。

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