生徒が発案、学祭来場者「電車運賃を負担」の成果 駐車場不足がきっかけ、高知商業高校の挑戦

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プロジェクトリーダーを務めた総合マネジメント科3年(取材時点)の黒田真由さんは、「プロジェクトの概要を全校生徒にわかりやすく伝えることに苦労した」と振り返るが、「とさでん交通」と共同で行った学校祭をPRするイルミネーション電車イベントでは新聞社からの取材にも対応した。

こうして、4年ぶりに復活した「電車で市商祭へGO!」。プロジェクトメンバーの誰もが、「コロナ禍による行動制限がなくなったことから多くの来場者があるだろう」と見込んでいた。しかし、ふたを開けてみると結果は異なっていた。学校祭への来場者は、約3800人とコロナ前の4500人前後から大きく下回ることとなった。なお、このうち、路面電車での来場者は延べ約730人だった。

一方で、肝心の各科クラス等での物販売上高は、取り組みを始めた2017年度の約570万円と同じだった。来場者が減ったが客単価が大幅に増加したのだ。学校側の運賃負担額約14万円を差し引いても物販の利益は約64万円が残った。

プロジェクトに参加した総合マネジメント科2年(取材時点)の山崎心南さんは「コロナ明けで多くの来場者が見込めるということで、各科クラス等が多めに商品を仕入れたこと。販売のための宣伝ポスターの廊下などへの掲示に力をいれたことや、校内でのお客様の呼び込み等に力をいれた」と話し、こうした販売面での工夫の積み重ねが来場者減少の中での客単価の向上につながったものと感じられた。

インタビューに答える黒田真由さん(左)と山崎心南さん(右) (写真:高知商業高校)

「とさでん交通」も好印象

「とさでん交通」も、高知商業高校の「電車で市商祭へGO!」について「路面電車の利用者増加につながっている」と話し、「もし、沿線で開催するイベントで同様の取り組みをしたいという依頼があれば、できる限り協力していきたい」と意欲を見せる。

鉄道をはじめとした公共交通は、昨今、運賃値上げや減便・廃止などの厳しい話題が相次ぐが、高知商業高校では、イベント主催者が来場者の電車運賃を負担することにより、イベント来場者が増加し、運賃負担額を上回る収益を得られることを明らかにした。こうしたイベント主催者が来場者の電車運賃を負担することでイベント収益をさらに伸ばすことができる仕組みを、ビジネスモデルとして定着させることができれば、赤字に苦しむ多くの交通事業者の収益力の改善に貢献できるのではないだろうか。

学校祭「市商祭」の様子(筆者撮影)
 
小椋 將史 ライター

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おぐら・まさふみ / Masafumi Ogura

2000年静岡県生まれ、岡山県育ち。
岡山県立岡山朝日高等学校、高知大学人文社会科学部卒。現在、高知工科大学大学院在学中。高校時代から鉄道ファンイベントの運営に携わり、広報活動を実地で学ぶ。2019年には井原鉄道などとコラボした「#鉄路でつなぐ復興のみち」を主催し、NHKや毎日新聞など多数のメディアに取り上げられた。

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