生徒が発案、学祭来場者「電車運賃を負担」の成果 駐車場不足がきっかけ、高知商業高校の挑戦

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このうち「とさでん交通」の路面電車は、JRの駅と比較して駅数(電停数)が多く、運行頻度も高い。さらに、高知市中心部の「はりまや橋」から、市内の東西南北に路線網を広げていることから、路面電車の活用に着目。こうしたことから、路面電車であれば自動車の代替手段として駐車場不足を解消できる。さらに、車内広告や側板広告などを活用できれば、市民に対しての広報活動も同時に解決できると考えた。

そこで、生徒たちは「とさでん交通」に学習会を依頼し、路面電車の歴史や文化を学ぶ機会を設けるところから取り組みをスタート。学習会の中で生徒たちは、路面電車の利用者が減少していることや、若者の電車離れが起きていることを知り、路面電車の乗客増加にもつながるような取り組みが必要になると考えた。こうして、検討を重ねた結果、学校祭来場者の電車運賃を高校側が負担する「電車で市商祭へGO!」という取り組みが産声を上げた。

コロナ禍で一時中断も4年ぶりに復活

「電車で市商祭へGO!」が最初に行われた2017年度は、来場者数が前年度の約3000人から1.5倍の約4500人に増えた。学校祭でのジュースやおにぎりなど物販売上高は、前年度の約350万円から約570万円に増加した。このうち、電車での来場者は延べ約950人で学校側の運賃負担額は約19万円となったが、その分を差し引いても、約120万円の利益が残り、前年度の約100万円から20万円程度増加した。この結果、学校側が来場者の路面電車の運賃を負担しても、その金額を上回るほどの増収効果があることが明らかとなった。そして、翌2018年度以降も取り組みを継続することになり、2019年度まで学校祭来場者は4500人前後を維持することになる。

さらに、高知商業高校では、2018年度以降は学校祭以外のイベントでも来場者の路面電車運賃を負担する取り組みもスタートさせた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、2019年を最後に、市民を招いての学校祭の開催ができなくなり、「電車で市商祭へGO!」の取り組みは中断せざるをえなくなる。

その後、コロナ禍を経た2023年9月、4年ぶりに市民を入れての学校祭が開催されることが決まった。「電車で市商祭へGO!」を知る生徒はすでに全員卒業していたが、当時を知る教員が生徒会に対して、集客方法のヒントとしてこうした取り組みがあったことを伝えると、「電車で市商祭へGO!」プロジェクトは再始動することとなった。

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