底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に

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この日、議長を務めた三木谷氏は、楽天モバイルの代名詞である「ショッキングピンク」を連想させる明るい色のネクタイに、スーツ姿で登場した。総会では、前期の事業実績をビデオで報告後、株主からの関心がとくに高い「財務戦略」「モバイル」「AI(人工知能)」の3つのテーマが個別に説明されたという。

楽天グループの株主総会当日の様子
総会当日、本社周辺の様子。コロナ後では最多となる465人の株主が来場したという(記者撮影)

3つのテーマのうち、最も長い時間が割かれたのがモバイル事業だった。三木谷氏は、モバイルが巨額の投資一巡後は利益率が大きく上昇する「固定費型ビジネス」であることや、ECや金融といった他事業とのシナジー効果が期待できることなどを説明した。

そのうえで、「損益分岐点を超えるのが今年の目標だ。それを達成した暁には、最終的にナンバーワンモバイルキャリアへの道、そこから派生するソフトウェア技術による世界への進出を行っていきたい」と、強気の姿勢を崩さなかった。

楽天モバイルは2月以降、家族や学生向けの新料金プログラムを相次いで投入している。三木谷氏は「3月の申し込みが大変順調だ」と述べ、足元の契約数を「650万」と明らかにしたという。過去最多を更新した昨年末(596万、MVNO・BCPを除く)から、約50万件増えた計算となる。今後も楽天経済圏の利用者や取引先の法人を中心に契約拡大を目指す考えを示した。

財務戦略については“強気”の説明

その後の質疑応答では約30分かけ、株主からの質問に答えた。過去数年、恒例にもなっていたモバイル関連の問いはなく、株主の注目は今後の財務戦略に移ったようだった。

今後2年で償還期限を迎える楽天グループ債

楽天は2024年の社債償還のメドがたったとする一方で、2025年にも約4800億円の償還を控えている。総会に約20年出席しているという株主からは、「金利負担が確実に増えていく中で、社債償還や借入金返済に向けたロードマップの詳細を説明してほしい」という質問があった。

この質問には財務担当役員ではなく、三木谷氏自ら、「金利はコントロールできないが、市場の楽天モバイルに関する信頼レベルが上がり、株価も回復基調だ。これに応じて、債券市場も信頼を戻している」と説明した。

三木谷氏は、楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという。

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