東京都・宮坂副知事が見た「自治体DX」理想と現実 都の外郭団体で未曾有のシステム大移動を支援

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――今回のプロジェクトは、一般市民からはわかりづらい基幹系システムの話でもあります。

世間一般では、自分の自治体でしか住民サービスを受けないから、日本中が1個のシステムで同じような仕事をしていると思われやすいし、僕も民間にいたときはそうだった。でも、それぞれの自治体は、長い歴史の中でシステムをカスタマイズして、きめ細かいサービスを提供している。同じ地方自治の事務といえども、違う点はかなり多い。

東京都副知事とガブテック東京理事長を兼務する宮坂学氏
宮坂学(みやさか・まなぶ)/1967年生まれ、山口県出身。同志社大卒。1997年にヤフー株式会社入社、2012年から2018年まで同社代表取締役社長。2019年7月に東京都参与に就任し、同9月から東京都副知事(任期は2027年9月まで)。2023年7月に設立された都の外郭団体「GovTech(ガブテック)東京」理事長を兼務し、都内の自治体DXの旗振り役を務める(撮影:尾形文繁)

今回の標準化では、裏側のセキュリティが強くなる、災害時に便利になる、新しい行政サービスが迅速に立ち上げられるといった意味があると思うが、急に豪華な住民票が出てくるという話でない。利用者からすると、生活が極端に変わることはなく、逆に変わったことを意識されないように(問題なく)移行できるかが大事だ。

「イチかバチか」で進めてはならない

――過去に例のない大事業なだけに、システム移行に伴うトラブルへの懸念はありますか。

いちばん大事なのは「安全第一」だ。1割の自治体が「怖い」と言っているのに、イチかバチか思い切っていこう、というタイプの仕事ではない。

自治体ごとに職員の仕事も変わり、システムは変わったけど職員が対応できなければ本末転倒だ。「これなら安全に移行できる」という状態で進めないといけない。後ろに行けば行くほど、現実的で柔軟な対応が必要だ。

――「2025年度」という期限は、コロナ禍にあった3年半前、菅政権下で急に決まりました。この期限自体に無理があったのでしょうか。

長期プロジェクトは、大規模で複雑なものが多く、それを妥当に見積もること自体が難しいし、正直やってみないとわからない。この手の話はできないところに目が行きがちだが、(コロナ後に)着実に行政のデジタル化は進み、都も含めて随分変わった。もちろん課題はあるが、コロナ以降に国のトップが「ここに行くぞ」と決断しなければ実現できなかった。

一概に、最初から国が間違っていたということは絶対ないと思う。

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