「子どもへの医療」こそ、世の中で"最高の投資"だ カンボジアの医療に学ぶ"お金のリテラシー"

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「現在、年間100名もの小児がん患者に向き合えています。これは2016年にカンボジアで病院を開いた当時から考えると、夢のようなことが起きているとも言えます」

病院を回ると、個人や法人の寄付によって整備された病棟や施設を多く確認できる。

また、病院の周辺にある現地の商店や住居と比べても、病院の建物がいかに立派なものであるかもわかる。そしてスタッフ総勢100名の規模の組織が医療サービスに動いている。

寄付という「社会からの応援」、そして「スタッフの献身的な活動」により、ジャパンハートのサービスは着実に前に進んでいるのだ。

「現場で一人ひとりの命を救うことが、我々の使命です」

一方、ジャパンハートのような国際医療NGOに対しては「意外な声」があることも神白先生は教えてくれた。

「ジャパンハートの医療活動を見られて、“カンボジア全体の医療システムや公衆衛生を変えないと意味がない”と苦言を呈される方もいるのです。チマチマと一人ひとりの患者を見ても、根本的な解決にはならないというご意見です」

しかし、と神白先生は続ける。

「それは正論ではあるのですが、その問題解決には他の主体が努力されています。我々は『現場で一人ひとりの命を救うことが使命だ』と考えていますし、そのような強い想いがなければ、アジア各国での医療活動をここまで続けてくることはできなかったと思います」

「我々が大切にしていることは『人の営みが人を幸せにできる』ということです。そしてこの組織では、スタッフも患者さんも幸せにしたい。医療ですので、子どもの命が助からないこともあるのですが、そのご家族には『この場所でケアしてもらった』という想いが残り、それがカンボジア社会の価値になっていくのだと思っています。今までもこれからも、一歩ずつ歩みを進めていけば、新しい世界が見られると信じています」

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