希代の起業家が伝授「新規事業の成功」見極める技 その提案は多くの人の「痛み」に寄り添えているか

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●「ニッチ」は、大成功を収めたり、ごく少数の人に大きなインパクトを与えたりする可能性がある(例えば、症例が少ない病気の治療)。あるいは、十分に活用されていないプライベートジェットのマーケットプレイスを立ち上げると考えてみよう。

このモデルには、十分な需要があるが、獲得可能な市場はとても小さい(そして裕福だ)。市場は小さくても、使用頻度や価値は非常に高い。きわめて優秀な会社である。

「問題」を見誤ったスタートアップの末路

●「敗者」は、ユーザーが少なく、使用頻度や価値が低い。

●「夢と悪夢」は、獲得可能な市場が「すべての人」であるカテゴリーだが、価値や使用頻度は低い。

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例えば、運転免許証の更新サービスだ。自動車管理局へ行くときは、いつも時間の無駄をペインとして感じるが、5年か10年に一度しか行く必要はない。

人は自らの夢を信じたがるものだが、現実としては、このカテゴリーは悪夢となる。市場は大きくても利用してもらえるだけの価値が備わっていないからだ。

遭遇する頻度や不満の大きさ、変化にともなうコスト、節約できる時間などによって、問題は評価できる。

どんなモデルでも、PMFまでの道のり(簡単に言うと、ユーザーに向けて、どのように価値を生み出すかを見つけるまでの道のり)のあいだに、解決策は何度か変更されるはずだ。

スタートアップ立ち上げの重要なモチベーションや理由となるのは、解決策ではなく、問題だ。

もちろん、初期のSNSやオンラインゲームの会社のように、問題なしでスタートして成功する会社もあるが、私のアプローチは常に問題からであり、解決策からはスタートしない。

 

 
ユリ・レヴィーン 起業家

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Uri Levine

2つのユニコーン企業=デュオコーン(二角獣)を生み出した連続起業家・創造的破壊者。世界最大のコミュニティベースの運転・渋滞・ナビゲーションアプリのウェイズを立ち上げ、2013年に11.5億ドルでグーグルに売却、2020年にムービットを10億ドルでインテルに売却した。スタートアップを通じて、非効率的な市場を破壊して不十分な機能のサービスを改善し、「大きな問題」に集中して世界をよりよい場所へ変えることを目指す。幾多の失敗から成功までの過程で培った知見をもとに、次世代の起業家のメンターも務めている。2015年には、エフード・シャブタイとアミール・シナーと共に、国際NPO「Genius 100」財団により「世界の100人」に選出。

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樋田 まほ 翻訳者

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といだ まほ / Toida Maho

翻訳者。商社、旅行会社勤務を経て現職。主な訳書に、『今すぐ使える! 稼ぐウェブサイト100のアイデア』『ポジショニングの10ステップ ヒット商品を生み出す不変の法則』(以上、ダイレクト出版)、『アウトサイダーズ 大自然を旅して生きる』(グラフィック社)、『VAN LIFE ユア ホーム オン・ザ・ロード』(トゥーヴァージンズ)、『マリメッコ プリント作りのアート』(青幻舎)などがある。

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