実在モデルを全部AIで?異例の広告制作の裏側 モデル事務所も協力、AIとの融合の先行事例に

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渋谷ヒカリエに掲載されたキービジュアルは、縦方向が10メートルにもおよぶ。必要な解像度は36000×45000画素と極めて高いが、この巨大広告も含めて、生成AIだけで制作している。

渋谷ヒカリエに展示された、Rakuten Fashion Week TOKYOのキービジュアル
渋谷ヒカリエに展示されたキービジュアル(撮影:ayami kawashima)

今回のプロジェクトでは、MidjourneyやStable Diffusionなど、一般に広く使われている多種多様な画像生成AIツールを掛け合わせ、ベースとなるモデルデータを選んだうえで、大量のカスタム学習もかけている。

コマーシャル領域で通用する高品位な画像を生成できるよう、大きな計算能力が利用できる専用のコンピュータ上でこの画像生成AIを動かし、3人のモデルたちの顔を徹底して学習させた。デジタルデータだけでなく、商業印刷にも対応可能な解像度へと高める技術が進んだことも、プロジェクト実現を後押しした。

1つの静止画作成までに約10時間

砂押氏によると、1つの静止画を完成させるまでに、トライアンドエラー、 クライアントなどとの調整を繰り返し、約10時間を要したという。

しかし、作り上げられた作品の質と、制作過程での制約の少なさを考慮するならば、十分な結果が得られていると感じる広告・ファッション業界関係者も多いのではないだろうか。モデルのスケジュールが合わない、希望するロケーションで撮影許諾を得られないなど、さまざまな理由で実現できなかったシーンも、AIを用いることで解決できるからだ。

実際、起用されたモデルは全員が海外を飛びまわる生活を送っており、3人そろって長時間の撮影を行う時間を調整することは極めて難しかった。今回の共演もAIを活用したからこそ、と言っても過言ではないだろう。

また、今回のプロジェクトでは60万円程度のハイエンドゲーミングPCを用いたというが、 画像生成を行うPCへの投資や、コンピュータの性能向上により、制作時間はこの先大幅に短縮できるはずだ。

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