フォートナイトに「和歌山の観光地」実現の舞台裏 観光資源豊富も交通不便、どう魅力伝えるか

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コロナ禍では観光以外でも、特徴的な人の動きがあった。

2017年から、全国の自治体に先駆けてワーケーションに最適なロケーションとして南紀白浜への企業誘致を積極的に行っており、コロナ禍で“ワーケーションの聖地”と称され、IT企業を中心に注目されているのだ。実際にサテライトオフィスや保養所を構える企業が続き、移住者も増えた。

新幹線が通らず、アクセスが不便

そんな和歌山だが、地域特有の課題もある。新幹線が通らず、国土軸から離れていることだ。和歌山市から兵庫・淡路島の約40キロを、世界最長のつり橋・紀淡海峡大橋を含めた幹線道路で結ぶ第2国土軸を提唱しているが、実現は見えていない。

つまり、大阪からも名古屋からもそれほど距離は離れていないものの、アクセスが不便であり、観光振興のひとつのボトルネックになっている。

加えて、全国の自治体と同様、高齢化と人口減少による労働力不足、とくに若い世代の産業の担い手の減少という地域経済の衰退への道を歩んでいる。

こうした課題解決への取り組みはいまにはじまったことではない。観光振興に向けては、10年以上前から県が主体となって観光事業者とともに動いている。

ただ、その中身は、東京や大阪といった大都市のほか、海外主要都市の観光シンポジウムや旅行コンベンションなどに参加し、旅行代理店などエージェントへの売り込みが中心になっていた。

そうしたなか、和歌山を拠点にバス、タクシーなどの輸送および旅行サービスを展開するユタカ交通の豊田英三社長は「これまではずっとギリギリのところを綱渡りでやってきましたが、従来型のエージェント向きの観光の捉え方を変えないといけない。これからの地域経済や観光振興は国内外の若い世代との接点をどう作っていくかがカギになります。彼らに刺さるものを作らないといけない」と考え、メタバース和歌山を立ち上げた。

ヒントになったのが、漫画やアニメの舞台のほか、テレビドラマや映画のロケ地が“聖地”となり、ファンが訪れる現象だ。バスケットボール漫画『スラムダンク』に出てくる神奈川の江ノ島電鉄鎌倉高校前駅近くの踏切には世界中からファンが殺到し、話題になった。

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