名門男子校生が「お金を稼げる仕事」を目指すワナ もっと「就職だけではない」ことを知ってほしい

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田内:起業は「投資される側」の一例で、他にもあるんです。凹沢さんはもうすでに「漫画」で投資される側に回っていると思いますよ。出版社はいくら予算があったところで、漫画家さんがいないことには漫画は作れませんからね。

凹沢さんみたいに、自分の貴重な若い時間を費やして、いい作品を作ろうと頑張っている人に、出版社が投資しているんです。

凹沢:私も投資されていたんですね……!

凹沢氏の担当編集者:いくら凹沢さんに才能があっても、最初から大ヒット作を描けるわけではありません。だから、その過程で原稿料として投資をしているんです。お金を増やすための投資ではなくて、人をサポートするための投資をさせていただいているんです。

凹沢:今までずっと、「もっと面白い話を描きたい、その過程でより高みに行きたい」という感じで自分のことしか考えていなかったのですが、改めて、連載までの下積み期間も含めて、ずっと投資してもらっていたんだなと実感できました。

田内:「面白い」というのは他者の視点でもありますしね。作品を通して、直に読者を楽しませられていることを自身で直接感じられるので、漫画家さんはとても素晴らしい仕事だと思います。

凹沢:読者さんから「今日は嫌なことがあったけど、『かし恋』を読んで元気が出た」という感想をいただいたりすると、私もすごく嬉しくなります。

田内:それ、わかります。主人公の正直くんも含めて、癖が強くて攻撃的なキャラが多いですけど、正直くんが関わった相手が最終的に救われるから、読後感がいいんですよ。『鬼滅の刃』に出てくる鬼もそうですよね。あっ、上からな感じですみません。

凹沢:いえいえ。気づいてもらえて嬉しいです。どんな人が読んでも楽しんでもらえて、キャラクターを好きになってもらえることを意識して描いています。

田内さんのお話を聞いていて、読み終わって「良かったな」という感情を抱いてもらえる部分に、お金を払ってくださっているんだなと実感しました。

男子校の「本当の姿」を知ると肩の力が抜ける

田内:それと、今の男子校とか女子校の雰囲気がわかるのは、親としても非常に参考になります。

凹沢:ありがとうございます。世の中に受験漫画はたくさんありますが、私は学校に入ってからの生活を知ることもとても大事だと考えています。

彼らの将来を決める価値観は学校に入ってからの生活で養成されると思います。この漫画は男子校出身の編集者さんと、たくさんの男子校に取材に行って作っているので、入学してからの生活を想像してもらいやすくなるかなと。

実際の男子校もこれくらいゆるいですから、受験のプレッシャーで悩んでいる親御さんに知ってもらえたら、力が抜けるんじゃないでしょうか。

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