入れ墨の「彫り師」と結婚した39歳彼女の"幸福感" 「見えない階層」を超えた2人のリアルな生活

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「ちゃんと薄紙に包んで持ってきてくれたんです。今でも家に飾ってあります。私は人から何かを作ってもらった経験がなかったのでひどく感動してしまって……。もしかしてこの人と結婚するかもと感じました。何度会っても居心地が良くて、そのうちに入れ墨への興味がきっかけだったのも忘れるほどでした」

出会ってから2カ月後には2人は真剣交際を始める。しかし、それからはケンカが絶えなかったらしい。原因は意外にも一馬さんが「会う時間が少ない!」といら立ったことだ。

同じ首都圏内とはいえ、当時のお互いの家は電車を乗り継いで2時間ほどかかる距離にあった。平日勤務、土日休みの勤め人である朋美さんは仕事帰りに一馬さんの家に寄る時間はない。一馬さんのほうは、日曜日が仕事が忙しい。建設現場などで働く顧客が貴重な休日を使って通ってくるからだ。金曜日もしくは土曜日の夜に朋美さんが一馬さんの家に来て、1泊して帰っていく日が続いた。月に4泊。朋美さんは十分だと思ったが、一馬さんは足りないという。

「きちんと料理を作ってもらったこともないので味覚が合うのかもわかりませんでした。生活がすごくダラしない人とも一緒にはなれません」

マイペースな2人は時間の使い方などで衝突

ちなみに一馬さんは一通りの家事はできるが、自分のためには何もやらないタイプだ。日中は眠くなっては困るのでタバコとコーヒーしか口にせず、夜はストレス解消のために酒場に行っていた。結婚前の交際費は月30万円ほどだったらしい。どちらかといえば朋美さんのほうが不安になる生活習慣である。

2023年の夏からは同棲を始めて、ケンカの内容が変わった。お互いにマイペースなので、休日に家事をする際の段取りや時間の使い方などで衝突するらしい。

「いつも一馬さんに怒られるけれど最近は聞き流せるようになりました。私が仕事で悩んでいるときは話をじっくり聞いてくれるし、最終的にはすべてを預けられる人だと感じています」

新居の家賃や光熱費は朋美さんの銀行口座から引き落とされるようになっている。毎月、十分な金額の生活費を一馬さんが朋美さんに渡し、その中から朋美さんがやりくりをしている。一馬さんには自由に使えるお金も残るが、飲みに行くことは「週6」から「週1」に激減した。

「朋美とケンカしたときに頭に来てスナックに行くぐらいです(笑)。飲みに行くこと自体には何も言われませんが、普段から『外で飲食すると余計な金がかかる』と洗脳されています。コンビニで酒やアイスを買うと、同じ銘柄のものをスーパーで3分の1ぐらいの値段で売っているのを見せられたり。確かに!と納得しちゃいます。酒がないと言うと、わざわざ安いスーパーまで自転車で買いに行ってくれる。冷蔵庫には副菜をいつもたっぷり作り置きしてくれているのでつまみには困りません」

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