「セクシー田中さん」報道で多発する意外な勘違い 現在のドラマは本当に漫画原作ばかりなのか?

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まず深夜帯では

月曜の「ブラックガールズトーク」(テレビ東京系23時6分)、「先生さようなら」(日本テレビ24時59分)、「チェイサーゲームW」(テレビ東京系26時35分)
火曜の「リビングの松永さん」(カンテレ・フジテレビ系23時)、「夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2」(テレビ東京系24時30分)、「瓜を破る~一線を越えた、その先には」(TBS系24時58分)
水曜の「パティスリーMON」(テレビ東京系24時30分)。
木曜の「めぐる未来」(読売テレビ・日本テレビ系23時59分)
金曜の「消せない『私』―復讐の連鎖―」(日本テレビ系24時30分)
土曜の「離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―」(テレビ朝日系23時30分)、「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(東海テレビ・フジテレビ系23時40分)

これらはすべて漫画原作のドラマ。

深夜帯のほとんどが漫画原作のドラマで占められているのです。深夜帯は「限られた予算の中で手早く手堅く配信再生数を稼ぎたい」という傾向が強く、プロデュースの主流は“漫画原作×アイドル的な人気を持つ俳優”のかけ合わせ。

深夜帯はゴールデン・プライム帯より、キャストやスタッフの人数、制作にかける時間と予算、PRの量、ネットニュースの数、SNSの反応などが段違いに少ないことは間違いないありません。言わば、「ゴールデン・プライム帯はオリジナルでホームラン狙い」「深夜帯は漫画原作で手堅くヒット狙い」のようなニュアンスで制作されているのです。

ただ規模や影響力が限定的な一方で、「だからこそ出版社や原作者から条件を出しやすく、テレビ局も尊重しやすいところがある」「原作漫画に忠実なドラマにできる可能性が上がる」のも事実。もちろん両者の交渉次第ではあるものの、ゴールデン・プライム帯のように視聴率獲得やスポンサー配慮、コンプライアンスや表現の幅などの問題が少ないため、原作側の意向が反映されやすいところがあります。

実は漫画原作に頼りがちなNHK

たとえば、2度のドラマ化と映画化もされた「きのう何食べた?」(テレビ東京系24時12分)は「深夜帯だから原作に忠実な世界観で描くことができた」という感がありました。「セクシー田中さん」ほどの販売実績と読み応えを併せ持つ漫画の実写ドラマがゴールデン・プライム帯で放送されることは自然である反面、もし深夜帯だったら、もう少し違う制作過程になったのかもしれません。

もう1つ漫画のドラマ化が目立つのはNHK総合。今冬放送の「正直不動産2」(火曜22時)、「作りたい女と食べたい女 シーズン2」(月~木曜22時45分)「お別れホスピタル」(土曜22時)はすべて漫画原作であり、しかも前2作は続編、後1作は同じ原作者の漫画をほぼ同じスタッフが手がける事実上の第2弾です。

さらにNHK総合は1クール前の昨秋も全3作が原作ありで、うち「大奥 Season2」(火曜22時)と「ミワさんなりすます」(月~木曜22時45分)の2作が漫画でした。民放各局とはビジネスモデルが異なり、時間、人、予算などに余裕があって、視聴率獲得やスポンサー配慮などの問題が少ないNHKが、なぜ漫画に頼らなければいけないのか。ここに朝ドラと大河ドラマを除くNHKドラマの課題が見て取れます。

ここまであげてきたように「ドラマは漫画の原作モノばかり」という記事やコメントはミスリードであり、「深夜ドラマは漫画の原作モノばかり」「NHK総合のドラマも漫画に頼っている」のが実情ではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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