「セクシー田中さん」報道で多発する意外な勘違い 現在のドラマは本当に漫画原作ばかりなのか?

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(写真:izumousagi/PIXTA)

さらにもう1クール前の昨春は15作中9作がオリジナル(60%)で、原作ありが6作(40%)、うち漫画は3作(20%)でした。

ここであげてきた最近の4クール1年間分を合算すると、63作中40作がオリジナル(63%)で、原作ありが23作(37%)、うち漫画は12作(19%)でした。

この「漫画原作は1クール3作程度で、全体の20%前後」というデータを見て、「ドラマは漫画ばかり」と思うか、「意外に少なかった」と感じるかは個人差があるでしょう。

しかし、30年以上にわたってゴールデン・プライム帯の主要作をほぼ見続けてきた筆者にしてみれば「明らかに減った」ように見えるのです。約4年半前の2019年7月13日に「夏ドラマ、前代未聞のオリジナル作品0 人気脚本家も深夜帯へ」(NEWSポストセブン)という記事を書いてYahoo!トピックスとして大きく報じられましたが、当時と比べてオリジナルの割合が高まっているのは間違いありません。

実際、民放各局はオリジナルに力を入れていて、たとえば業界トップの歴史と実績を誇るTBSの「日曜劇場」(21時)はほぼオリジナルですし、昨春に新設されたばかりのテレビ朝日系・日曜22時のドラマ枠(ABCテレビ制作)は4作すべてオリジナル。その他でも、フジテレビ系の月曜21時、テレビ朝日系の火曜21時なども、オリジナルメインで制作する主要ドラマ枠が増えているのです。

なぜ今、民放各局はオリジナルに注力し、その背景にはどんな理由があるのでしょうか。

IPビジネスの肝となるオリジナル

その最たる理由は収益性を高めるため。デバイスの発達や視聴習慣の変化などで放送収入の減少が避けられない中、それを補うものとみられているのが配信収入であることはすでに周知の事実でしょう。

無料配信での動画広告、自局系動画配信サービスでの有料会員獲得、海外への配信などで収入を得ていくことが求められ、なかでもドラマは最大の稼ぎ頭。事実、TVerなどの配信再生数ランキングではドラマが上位を独占し続けていますし、スポンサーが好む若年層の配信視聴が多いことも民放各局が注力する理由の1つです。

その点、オリジナルは原作ドラマ化のような脚色の制限がなく、「物語や登場人物をそれらの収入を得やすいものに最適化できる」のが強み。さらに、ネタバレがないため考察が盛り上がり、伏線や小ネタを探す楽しさを盛り込めるなど、ネット上の反響を狙いやすいなどのメリットがあります。

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