JR旅客6社&貨物の「新規事業担当者会議」に潜入 鉄道に匹敵する「新たな事業柱」を育成できるか

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一方のJR貨物は、2020年から2022年にかけて東京貨物ターミナル駅の南側に東京レールゲートという巨大物流施設2棟を竣工し、さらに札幌など全国に物流施設の展開も狙うが、活用可能な土地は限られている。持続的な成長のためにはやはり不動産に頼らない新規事業を開拓するしかない。

若手社員を対象にアイデアを募ったところ、160ほどのアイデアが出た。外部コンサルタントも入れてそれを4つに絞り込んだ。その中にあったのが植物工場である。ただ、JR貨物には野菜栽培に関するノウハウはない。そこで、パートナー企業を探していたところ、取引銀行から紹介されたのが日本山村硝子だったというわけだ。

日本山村硝子も単独で行うよりも合弁方式のほうが早く事業が成功する可能性が高いと考えた。また、「大型の工場を成功させることで社会的な信用度が向上し、ほかの企業とのジョイントや技術提携の話が進む可能性を感じた」(木村社長)。

JR貨物にとっては合弁方式により短期間でビジネスのノウハウが得られる。さらに将来、出荷量が増えて全国に出荷することになれば、トラックに比べて環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の利用拡大にもつながる。こうして両社の考えが一致し、合弁会社の設立に至ったというわけだ。YJKSの資本金は1億円。出資比率は日本山村硝子が51%、JR貨物が49%である。

「スーパーフード」を生産

一般的には植物工場で栽培される野菜の代表例はレタスである。少ない光量で栽培でき、短期間での収穫が可能だが、それだけに参入する企業が多く価格競争に陥りやすい。「価格競争に巻き込まれない唯一無二の野菜を作りたい」。こんな思いからYJKSが力をいれるのがケールの栽培だ。ケールはスーパーフードとして知られており、各種の栄養成分を豊富に含む。調光の工夫により、栄養素をさらに高めることも可能だ。現在、ケールはこの工場の生産量の8割を占める。

「特殊なLEDを開発し、調光で野菜の硬さや柔らかさを調整できる」、「野菜の袋詰めでも機械化を行い、1袋あたりの重さが均等になるようにしている」、「収穫までの期間は30日くらいまで短縮した。もっと短くすることもできるがそうすると味が落ちるので、これが限界」、「現在の稼働率は40%くらいでもっと増やしたいが、人手が足りない」……。木村社長の説明に参加者の多くがメモを取っていた。新規事業の選定、立地の選定、事業効率化の工夫など、実際の工場での説明は各社の担当者にとって学ぶことが多かったようだ。

このあと、おおい町の施設に移動して同町が行う産業振興の取り組みについての説明を受けた後、敦賀に戻って2日間の日程が終了した。

山村JR貨物きらベジステーション 各社担当者説明
山村JR貨物きらベジステーションの工場内で説明を受けるJR各社の新規事業担当者たち(記者撮影)
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