岸田首相が派閥解散で描く「楽観シナリオ」の中身 裏金問題の「すり替え」批判で退陣の可能性も

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憲法は衆院が優先的に首相を選出することを定めており、多数を得た政党の代表が首相に選ばれるのが通例だ。その党では、トップリーダーの座をめぐって多数派工作が繰り広げられる。その際、理念や政策によってできる集団を「派閥」「政策集団」「グループ」と呼ぶかは別として、何らかの集団が結成されるのは避けられない。

問題はその集団がカネを配ったり、閣僚や党役員の人事を要求したりするという点だ。今回の裏金問題は、安倍派を中心にカネと人事を軸に派閥を運営し、増殖させていった点である。

そうした派閥の弊害は自民党の「宿痾」ともいえる問題点であった。田中角栄元首相のロッキード事件、竹下登政権下のリクルート事件、竹下派の金丸信会長の東京佐川急便事件やゼネコン汚職事件……。自民党は1989年には、首相や閣僚らの派閥離脱などを求めた政治改革大綱を定めて、派閥政治の打破をめざした。

派閥離脱を拒んでいた岸田首相

ただ、当初は派閥離脱が守られていたが、徐々に形骸化。岸田氏も外相や政調会長に就いた際に宏池会を離脱しなかった。首相就任時も、さらに2023年1月に菅義偉前首相が雑誌インタビューで、岸田首相に派閥離脱を求めた際も、岸田氏は離脱を拒んでいる。

派閥パーティーの裏金疑惑が発覚した2023年末になって、ようやく宏池会会長を辞任すると表明した。岸田氏の「派閥好き」は自民党内では知られた事実であり、その意味で政治改革大綱違反の張本人なのである。その岸田氏が派閥解散の旗を振っても、自民党内で信頼感が広がらないのは当然である。

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