日本の支援終了、「軍政下」ミャンマー鉄道の現状 線路改良や新車両、運転本数激減で「塩漬け」

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線路は真新しい道床になり、以前と比べて乗り心地は圧倒的によくなった。そして何より、日本信号製の分岐器や信号機、それに付帯する機器があちらこちらで見られる。将来の増発を見越して、信号機はかなりの間隔で新設されている。そして、冒頭で触れた踏切がカンカンと鳴っている。軌道回路を検知して自動で開閉する日本の一般的な踏切だが、東南アジアの鉄道ではかなり高級な部類に入る。

ミャンマー 日本信号製 分岐器
設置されたばかりの分岐器。日本信号のロゴが見える(筆者撮影)
ヤンゴン環状線 踏切警報装置
日本でもお馴染みの日本信号製の踏切警報装置(筆者撮影)

これらは「ヤンゴン環状鉄道改修事業」によって導入されたもので、2023年6月頃までに設置されたばかりだ。結果的にはわずか1日数本の列車のためになってしまったわけで、もったいない限りだ。2024年2月頃には環状線向けのCAF製車両(66両)が納入される見込みだが、このままでは使うあてもなく、車庫で「塩漬け」になる可能性が高い。

離職者多数、異常な警備で客離れ

市中の賑わいに対してここまで鉄道が凋落している理由は、国の直轄であるからにほかならない。軍政に対する非服従運動(CDM)で、無視できない数の国鉄職員が職場を去り、クーデター直後は列車を満足に運行できる状況ではなかったという。その後、復帰した職員も増えてきたそうだが、すべてが戻ってきたわけではない。そして、政府の財政状況から、運転経費が賄えていない可能性がある。

駅構内や車内の異常なまでの警備も利用者離れを引き起こしているといえる。前述の通り、鉄道警察は「無害」な客に対しては寛容であると見え、筆者も気が緩んでいたが、とある環状線の駅で、草むらから突然3人の兵士が飛び出してきた。全身迷彩柄に身を包み、眼が鋭く光っていて、鉄道警察とはまったく異なるオーラを放っていた。

ミャンマー 郊外の駅
環状線西側のとある駅。この後、突然草むらから兵士が飛び出してきた(筆者撮影)

兵士のターゲットは列車待ちしている大学生4人組だった。有無を言わせない強引な事情聴取で、カバンを開けさせて手荷物の一切合切、ノートの中身まで調べられていた。結局その場で彼らは解放されたが、連日このような聴取をされるのでは、列車に乗るのも気が気でないだろう。

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