台湾と韓国で同時台頭する政界「第3極」に注目せよ 世界秩序の歴史転換に日本は鈍感だ

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今回の争点は従来の対中関係ではなく、8年に及んだ民進党統治の是非を問う信任にあったと思う。柯氏は「独立や統一議論は無意味」と訴えた。総統選初戦の民衆党に26%の票が集まり、民進、国民の二大政党候補の票を食ったことがそれを示している。

中国は選挙結果を「民進党が島内(台湾)の主流民意を代表できないことを示した」と論評したが、的を射ている。「中国の脅威」を主要な争点にしてきた政策だけでは、民進党の支持は得られないことが今回の選挙に出た新変化だと思う。

対中関係については台湾有権者の多くは、統一でもなく独立でもない「現状維持」を今後も選択する。統一支持はせいぜい10%、独立は中国の武力行使を招く恐れがあり、安保の後ろ盾のアメリカや日本も支持しないことを有権者は知っているから、現状維持しかない。国民党と民衆党も現状維持支持だ。

韓国で結成された保守系新党

一方、2024年4月に総選挙を控える韓国でも、台湾総統選直後の1月15日、保革2大政党に不満を持つ層を取り込もうとする「第3極」を目指す動きが表面化した。

保守系与党・国民の力元代表の李俊錫(イジュンソク)氏が「改革新党」の結党大会を開き、李氏は「市民が本当に期待する論題は何かを見せる時がきた」と結成理由を述べた。2大政党がこれまでの選挙で争点の主軸にしてきた政策見直しの含みがある。

台湾と韓国は、日本の植民地支配を経た後、戦後はアメリカとの軍事同盟下でそれぞれ中国、北朝鮮と対峙してきた点で共通する。冷戦下で両者は「反共の砦」として中国と北朝鮮との軍事衝突の最前線になった。当時は両者の政治はアメリカの後ろ盾を背景に「独裁体制」だった。

しかし1980年代に入ると両者はともに民主化を進めた。アメリカのコントロール下にある政治を変えねば、民主化の成果と有権者の支持は得られないためである。

一方、「敵」との和解も同時進行した。成長する台湾、韓国の経済成長を加速させることがアメリカの利益になるから容認したのだ。日本の植民地支配大戦後も、台湾と韓国政治が似ているのは、新しい「支配者」のアメリカが内政を決める主要因だったからだ。

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