先進国で「出生率低下」嘆く人に知ってほしい視点 大家族を作らないという選択は「利己的」なのか

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ハレーディームはイスラエルの人口増加にも寄与している。長期にわたって大家族を築いてきた集団では普通のことだが、彼らのコミュニティも若い。彼らの場合、人口の60パーセントが20歳以下だが、彼ら以外のユダヤ人全体では30パーセントが20歳以下である。だがイスラエルで子だくさんなのはハレーディームだけではない。出生率は宗派を問わず全体的に高く、先進国とは思えないレベルである。

イスラエルの女性はシンガポールの女性のほぼ3倍の子供を産んでいて、それでいて教育水準も高い。またアメリカと同じようにイスラエルでも、信心深いかどうかとは別の問題として、政治的に保守的な集団のほうが子供の数が多い。

「イスラム教徒の方が子供が多い」は思い込み?

なんらかの価値観に基づいて出生率が変わることがあれば、人口動態に関するわたしたちの想定の多くが覆ることになる。ユダヤ人の子供の数は、イスラム教徒が圧倒的に多いアラブ人などの諸民族よりも少ないと思っている人がいたとしてもおかしくないが、それはもはや事実ではない。1980年代前半には、イスラエル人女性が産む子供の数はイラン人女性の半分にも及ばなかった。今ではそれよりずっと多くなっている。

ただし世界全体を見渡してみると、ユダヤ人も決して一様ではない。イスラエルでは全体的に合計特殊出生率が高く、もっとも宗教色の薄いコミュニティであっても人口置換水準を超えている。一方アメリカの世俗派のユダヤ人はアメリカ国内のあらゆる人種グループのなかでもっとも出生率が低い集団のひとつである。

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