「世界の船の3割が通る」紅海で攻撃が続く影響度 日本郵船など国内海運大手もルート変更で回避

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フーシ派はイエメン北部を拠点とするイスラム教シーア派系のザイド派の復興を志す武装組織だ。

2004年に蜂起し、2014年9月にはイエメンの首都サナアを占拠、2015年1月に実権を掌握している。その後、同年3月からのイエメン内戦への介入を開始したサウジアラビア主導の連合軍とも戦闘していた。

ガザでの戦闘の行方が今後を左右

フーシ派の軍事力はイエメン内戦以降、急速に強化され兵員数は20万人を超えるという見方もある。日本エネルギー経済研究所・中東研究センターの副センター長である坂梨祥氏によると、「フーシ派はイスラエルによるガザ攻撃の停止に加え、イエメン国内でのプレゼンス強化を目指している」という。

フーシ派による日本郵船貨物船の拿捕
日本郵船の運航する「ギャラクシー・リーダー」がフーシ派に乗っ取られた際の様子を記録した画像(写真:Houthi Military Media/ロイター/アフロ)

これに対抗しているのが中東地域の海洋安全保障を担っているアメリカだ。フーシ派が攻撃する商船護衛を目的に米英を中心に行っている「繁栄の守護者」作戦では、「20カ国が参加を表明している」と発表している。判明しているだけでもアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、バーレーンなどが参加している。

一方のフーシ派の背後にはイランがいるとされる。1979年のイラン革命以降、「抑圧との闘い」と「アメリカへの対抗」を掲げ、アメリカとイスラエルを敵対視。イスラエルのガザ攻撃も強く非難している。

「フーシ派の船舶攻撃を停止させるには、イスラエルによるガザ攻撃の停止が有効」と坂梨氏は指摘する。今回の危機の主要因であるガザでの戦闘を平和的かつ速やかに終了させることができるのか。国際社会は難題を突きつけられている。

岸本 吉浩 東洋経済 記者

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きしもと よしひろ / Yoshihiro Kishimoto

1996年東洋経済新報社入社。以来各種企業調査にかかわる。『CSR企業総覧』編集長として、CSR調査、各種企業評価を長年担当。著書に『指標とランキングでわかる! 本当のホワイト企業の見つけ方』など。2023年4月から編集局記者、編集委員、『本当に強い大学』2023年版編集長。

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