南仏のマクドナルドを「不法占拠」した彼の"望み" 貧困・治安悪化の街の騒動がフランスで話題に

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
拡大
縮小

店のウェブサイトをのぞいてみると、客とも店員ともとれない私服の人たちの笑顔が印象的だ。壁には「ファストフード」と書かれた文字。そう、ここはハンバーガーやフライドポテト、シェイクなどのイートイン、テイクアウトを専門とする飲食店なのだ。

ラプレ・エム
「ラプレ・エム」の単品メニュー(写真:ラプレ・エム提供)
ラプレ・エム
こちらはセットメニュー(写真:ラプレ・エム提供)

メニューをぱっと見た感じは、ほかのファストフードのチェーン店とさほど変わらない。バーガー類、ポテトやナゲットなどの単品商品があり、ドリンクとのセットメニューも並ぶ。値段も、ほかと比べて高くもなければ安くもない。ハッキリ言って、このような店は筆者の住むパリでもよく見かける。

しかし、なぜこの店がフランス全土で注目を集めているのだろうか。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの集まり「海外書き人クラブ」の会員が店の仕掛け人に聞いてみた。

超貧困地区にとある異変が…

その答えを紹介する前に、今のマルセイユについて触れておきたい。

実は多国籍な風情を残す街の治安が、昨今著しく悪化している。その理由は、港からフランスに持ち込まれる麻薬や武器の数々と、それを売り買いする闇取引の横行だ。

2023年にマルセイユの麻薬密売に関わり犠牲になった人の数は、11月の時点ですでに45人と過去最多を記録。マルセイユが昨年のヨーロッパの都市のなかで「最も危険な街」に位置付けられた。

さらにこの街の貧困問題も深刻さを極める。マルセイユ市の人口約85万人のうち、貧困層と呼ばれる生活水準の人は24万人以上もいる。貧困率は約30%だ。

そんな街に誕生したファストフード店。筆者が店に問い合わせると、同店の創設者カメル・ゲマリさん(42)が取材に応じてくれた。

カメルさんは開口一番、「ここは地域住民のための店ではない」と言う。そして「この店は地域住民のためではなく、“地域住民とともに”存在するのです」と説明した。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT