賛否両論・笠原家の食卓が「きちんとしてない」訳 「理想の食事」からもっと自由になってもいい

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「サザエさん」を通して思うのは、みんなが揃って食卓を囲む風景というのも、もう昭和のものになったということだ。3世代が同居して、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもと孫がいて……という家は、かなり少なくなっているのではないか。

これは、出汁の取り方にも通じることだと思うのだが、今の人たちは「理想の食卓」「理想の家庭」のイメージからも、自由になったほうがいいと思う。

たとえば、テレビで新築マンションのCMを見たりすると、微笑み合っておしゃべりをしながらごはんを食べている家族や、いつまでも仲睦まじい夫婦が登場したりするが、そういうのは多分に理想像だ。

サバ缶を缶のまま食べることも

今の笠原家の食卓だって、みんなわりと黙々とごはんを食べている。それでも、たまには「今日、友達がこんなこと言っててさ……」とか、「ちょっと聞いてくれる、仕事でこういうことやってるんだけど……」とか、「店に来たお客さんが面白いこと言ってね……」とか、たわいもない会話のキャッチボールがあったりする。

上の娘2人は社会人と大学生、末の息子は高校生だから、そもそも一緒に食べることがない。食事の時間帯がまったく噛み合わないからだ。店の仕事が終わって僕が帰宅する時間には、もうみんな寝ている。

たまに家族が揃っても、ぜんぜんきちんとしていない。サバ缶を缶のまま食べたり、面倒くさいときはコーンフレークをラーメンのどんぶりで食べたりということもある。

僕の場合、夕ごはんのときは先につまみを食べて、ごはんは締めで最後にしたいから、食べる順序も息子とは真逆だったりする。

ふだんの僕の夕ごはんと言えば、店で出した刺身の切れ端とか、形の悪い部分や、ちょっとお客さんには出せないものなどを持ち帰って、ささっと食べているという感じだ。それに納豆ごはんとかを合わせたり。ちょっと最近食べすぎだなと感じたときは、冷奴に何か垂らして、「ごちそうさん!」というときもある。

みんな忙しいし、食べる時間もばらばら。リアルな食卓は、多くの家庭がそんな感じなのではないかという気がする。

だからと言って、気持ちが離れているというわけではない。

我が家では、たまにみんなが揃う日がわかったら、そのときはスーパーに行って、ちょっといい食材を買い込んで、気合いを入れて作ったりしている。

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