損保大手4社「覆面座談会」で見えた残酷な実態 「不正請求は日常茶飯事」「在庫車を強制購入」

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Aさん 大手のディーラーには、損保の社員が出向します。出向者の人件費負担は、損保とディーラーでほぼ半々。年収800万円とすると、ディーラーは400万円の人件費で損保社員をこき使うことができる。こんなに都合のよいことはないので、出向者をどんどんよこしてくれ、とディーラーはルンルンで言ってきますよ。

そういう面では、BMも大手ディーラーも日頃の行いに大差はないですね。

Dさん うちの場合、関東のある大手ディーラーに、出向者は出していないものの、役員が担当として張り付いています。しかもうちの支店はそのディーラーの本社ビルの中にある。今はどうか知りませんが、昔はうちの支店長がそのディーラーの経営者宅に寄り、庭の掃除をしてから一緒に出勤するなんてこともあったと聞きます。支店長にもなって、そんなことをさせられたら地獄ですよね。

損保からコンサルに転職する人が多い

──ここ数年は大手損保でも社員の転職が増えていると聞きます。とくに若手の人たちは、業界の理想と現実とのギャップに嫌気が差して辞めていくのでしょうか。

Gさん 同期は入社時にたしか400人ぐらいいましたが、すでに100人以上が辞めています。コンサル(ティング)会社に転職する人が多いですね。

私は「配属ガチャ」に恵まれて、本社の管理部門に配属されたのでラッキーだったかもしれない。世間一般に比べれば、給料も福利厚生も恵まれている。それが救いではあるけれど、収益源の自動車保険は今後先細りが確実なので、将来の経営に対する不安は少なからずあります。

Bさん 部門にもよりますが、営業はやはり激務だと思う。地方の名家出身など育ちのよい人が多いので、営業でお客さんから罵声を浴びせられたり、ひどい扱いを受けたりして心を病んでしまう人が少なからずいる。同僚が病んでいく様子を間近で見せられるのが、自分としてはいちばんきつい。

Fさん 商社マンのように世界を股にかけて活躍するイメージを持って入社したのに、自動車ディーラーの社長にこき使われて、泥水をすするようなことをさせられたら、誰でもなえますよ。

そうした腐った慣行をどこかで断ち切らないと、この業界は「オワコン」まっしぐらだと感じています。

(構成:中村正毅)

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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