ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた 「遊べる本屋」はなぜ魅力を失ってしまったのか

拡大
縮小

ヴィレヴァンの大きな特徴は、本やCD、DVDといった雑貨がジャンルレスにそこかしこに並べられ、まるで洞窟のようになっている店内空間だ。エンターテインメント性を押し出した店舗の空間こそ、ヴィレヴァンの強みの一つだった。だから、オンライン事業への注力は、その強みが生かせなくなるジレンマを引き起こすのだ……と、不破は言う。(続々と店舗を閉鎖するヴィレッジヴァンガード。オンライン化を遮る“壁”/日刊SPA!)

とはいえ、ヴィレヴァンの収益全体におけるオンライン事業の割合はさほど高くなく、私はむしろリアル店舗の空間の作り方そのものに、ヴィレヴァンの業績が不安定な要因が隠れているように思える。

私はこれまで、チェーンストアをはじめとする商業施設について、空間という切り口から分析してきた。ここでは、それらの知見も生かして、ヴィレヴァンの空間に潜んでいる問題点をあぶり出してみよう。

ヴィレヴァンは「世界観」を大事にしてきた

まずは、ヴィレヴァンの店を訪れてみる。店内の通路はゴチャゴチャしていて、迷路のよう。うかうかしていると、さっき通った道に戻ってきてしまう。

本屋ではあるが、扱っているのは本に限らず、CDやDVD、あるいは雑貨に洋服、なんでもあり。それぞれの商品にはその商品の魅力を伝えるPOPが書かれ、そこにはちょっとおどけた商品の宣伝が書いてある。

ヴィレヴァン
この雰囲気に、ワクワクしていた読者も少なくないはず(筆者撮影)/配信先では写真をすべて見られない場合があります。本サイト(東洋経済オンライン内でご覧ください)

ヴィレヴァンの店舗空間を見て思うのは、「世界観」がそこに形成されていることだ。実際、「ヴィレヴァンっぽい」といったら、私たちはなんとなくそのニュアンスを理解できる。ヴィレヴァンの成功のカギの一つが、このような独特な「世界」を空間的に作ったことにあると思う。

しかし、私は、このヴィレヴァンの世界観を演出する空間戦略にこそ、その不調の原因があると思っている。それを以下の2点から説明しよう。

①ヴィレヴァンを支える「サブカル」という言葉が曖昧になり、その空間も曖昧になった。

②「世界観」を強く訴求することと、消費者のニーズに齟齬がある。

次ページ「サブカル」の消失と、店舗空間の曖昧さ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT