能登半島地震、支援者が語る「現場対応」の難しさ 孤立続き、アクセスも困難。依然深刻な地域も

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――情報発信や情報共有はできているのでしょうか。

七尾市のように比較的交通の便が良い場所では、支援物資も集まるようになってきているようです。珠洲市内でも大規模避難所には食料は潤沢にありました。仮設トイレの設置も進み、水洗トイレも一部にはありました。

他方、市街地から離れた地区にある避難所は事情が異なります。情報発信や避難所同士の連絡、情報共有がはうまくできていないため、物資の偏りがみられました。

道路の損傷がひどく、放置されたままの車両も(撮影:大谷哲範氏)

――大谷さんたちのチームは、どのように受けとめられましたか。

今回、みなし避難所と呼ばれる場所も訪問しました。これは被災者宅での自主運営の避難所です。日中に訪れた時は人が少なかったので、近隣を回り、自宅を修繕している人を見つけて何人かに声をかけたのですが、ものすごく警戒されました。

ボランティアが入っていないために、その存在自体が知られていないのです。私たちが支援に当たっていることを説明し、簡易トイレなどの支援物資をお渡ししたところ、たいへん喜ばれました。

SNSなどでは迷惑ボランティアがたくさん来ているといった情報が拡散されています。そのため、私たちのような支援者が行っても、どのように接したらいいかわからない人が多いのが実情です。

厳しい道路事情、二次災害の危険も

――道路事情や安全上の留意点について教えてください。

珠洲市につながる道路は大渋滞が起きていて、市内に入ることすら難しいのが実情です。雪も降っており、装備が不十分だとトラブルに見舞われる可能性も少なくありません。相次ぐ余震や降雨・降雪で地盤が緩み、地滑りなどの二次災害も懸念されます。道路上には落石がごろごろしています。

――今後の支援活動の見通しや課題は。

珠洲市は道路事情が悪く、斜面の崩落など危険な場所が多い。仮設トイレの設置もまだ一部にとどまります。そのため、災害ボランティアセンターを開設したものの、現時点ではボランティアを受け入れることができていません。

今後は、被災の少ない周辺の都市からのボランティアバスの定期的な運行の仕組みづくり、避難所間の連携のためのコーディネート、在宅被災者も等しく支援が受けられ、誰一人取り残さないための活動の実践が望まれます。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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