公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める

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大川原化工機を立件したのは警視庁の公安部外事1課。捜査を指揮したのは宮園勇人警部だ。

「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された。“あるべきではないところ”というのは、後からわかったことだが宮園警部の作り話である。

警視庁、経産省、検察は何を行ったのか

宮園警部の忠実な部下の1人だった安積警部補は、四ノ宮教授ら有識者の研究室に何度も通い、「捜査メモ」や「聴取結果報告書」を作成した。

そうした書類は、「大川原化工機の噴霧乾燥器は生物兵器の作成装置に転用できない」「したがって輸出規制製品に非該当」とする経産省の安全保障貿易管理課のT検査官を説得するために必要だった。輸出規制品の審査を担当するT検査官は、当初、公安部が問題視する噴霧乾燥器は規制対象ではないとの立場を取っていた。

そこで、宮園警部は警視庁公安部長から経産省に圧力をかけるよう画策する。

「公安部長が動いた」

そう上司に聞かされた経産省のK課長補佐は、仕方なく「ガサ(家宅捜索)はいいと思う」と公安部に譲歩した。K課長補佐はT検査官の上司である。

一方で、K課長補佐は「立件は別の件を探してもらいたい」「輸出許可申請の実績は1件しかないことを検察に言ってほしい(大川原化工機の噴霧器は許可申請が必要な機械装置ではそもそもない、の意味)」と宮園警部に伝えた。 

このように経産省は再三クギを刺していた。また、任意の取り調べで大川原化工機の複数の従業員は、「装置内部を殺菌・滅菌するために加熱しても、温度が上がらない箇所があるから生物兵器に転用できない」と話していた。それにもかかわらず、公安部は大川原正明社長ら3人の幹部を逮捕した。2020年3月のことだ。

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