ロス続出?「セクシー田中さん」結構ヒットした訳 令和のドラマらしい「穏やかさ」が安眠導入剤に

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社外で、自由に生き生きと自分のしたいことをしている田中さんに比べると、朱里は縛られて生きている。安定した生活を求め、合コンに参加し、そこで男性に気に入られるような言動を心がけるような日々を過ごしてきた朱里は、他者の目を気にして生きていることに劣等感を覚えている。でも、田中さんから見たら、そんな朱里のほうこそ、コミュニケーション能力に長けていてうらやましい存在だった。

田中さんはアラフォーの今の今まで、友達も恋人もできたことがなく、だからこそ、思い立ってベリーダンスをはじめたのだ。すると、それまで猫背で、まるで老婆のようだった見た目が、みるみる背筋が伸びて、田中さんを輝かせていったのである。

仲良くなっていくにつれて互いに変化が

まるで対照的に見える田中さんと朱里は、それぞれ悩みを語り合い、おしゃべりを通して、仲良くなっていく。最初は、むすっと口数が極端に少なかった田中さんが、朱里と恋バナしたり、自宅に招いたりするようになると、じょじょに表情が柔らかになり、モノローグも増えていく。そしてますます見た目も輝いて注目度が上がっていくのである。

余談だが、田中さんがひとりでブツブツ言っているときの口調が、映画にもなった『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の主人公・整くん(菅田将暉)みたいだと思ったら、脚本が同じ相沢友子だった。

これまで無駄にコミュ力を振りまいてきた朱里も、他者に媚びるようなことなく、自分の意見をちゃんと言えるようになって、老人ホームのメイクボランティアを通してやりがいを見つけていく。

こんなふうに、1人で悩んでいたことが、誰かに聞いてもらうことで解決していくことは喜ばしい。人は誰だって悩みを抱えて、その解決策を探しているが、1人ではなかなか難しい。かといって、誰かにぐいっと方向を変えられるのも嬉しくない。

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