みずほ信託、「ひとり親」を救うファンドの正体 社会貢献と会社利益の「二兎」を追えるか

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賃貸マンション市場は価格高騰が進んでいることから、取得対象となる物件も事業会社が保有する社宅に照準を定める。社宅は好立地に立つことが多い一方で、入居者の退去が進んで遊休化している物件も多い。

ひとり親家庭の支援に共感した会社からも、相場よりも安価での社宅の提供を依頼する。取得した住宅は、賃貸前にリノベーションを施す。

社宅を首尾よく取得できるか

2024年度を目標とする運用開始に向けて、ファンド組成の準備を進めるみずほ信託。むろん、ひとり親家庭の支援という前例のない理念を掲げるファンドが、もくろみどおり軌道に乗るかは未知数だ。

まずは、運用対象となる社宅を首尾よく取得できるかだ。当初は、みずほフィナンシャルグループ自らが保有する社宅の拠出を検討し、運用実績を作ることを優先する。

ファンドに対してはすでに、社会貢献の理念に共感する投資家からの問い合わせも来ている。他方、市場にはESGを掲げる金融商品が豊富に存在する。

「ESGのうちE(環境)やG(ガバナンス)は色々とやっているが、S(社会)はアプローチが限られる」(梅田社長)。投資家が拠出した資金がひとり親家庭への住宅供給につながるという、社会貢献の一環であることを訴求できるかもカギを握る。

社会貢献と利益追求の二兎を追うみずほ信託の挑戦が実を結ぶかは、ESG投資が実際に社会に貢献できるかの試金石にもなりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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