MS、GoogleにMeta、Amazon参戦も「生成AI」の勢力図 日常使いから企業向けまで各社ガチンコ対決

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アマゾンがようやく自社開発の生成AI「Q」を発表したのは11月末のことだ。これはChatGPTのような一般消費者向けではなく企業向けの対話型AIで、主に顧客企業の従業員がAWS(Amazon Web Services)上で各種アプリを開発するのを支援する。また従業員が日常業務に関する専門知識や情報を尋ねたり、長文の業務用文書を要約するなどの目的にQを利用することも想定している。

このためにセキュリティ管理を徹底し、たとえばマーケティング部門の従業員が企業の財務状況や顧客情報などに関する質問をQに投げかけても回答を拒否するように設定できるという。こうした企業向けの生成AIはマイクロソフトやグーグルが共に月額30ドルで提供しているが、後発のアマゾンはQを月額20ドルと若干安めの価格で提供する。

プレビュー開始から間もないこともあって、Qに対する顧客企業からの評価は定まっていない。むしろ(Qと同時に発表された)アマゾンが半導体設計・製造大手NVIDIA(エヌビディア)と共同開発するAIスパコンなどインフラ開発のほうに業界の関心は集まっているようだ。

アマゾンのAWSには以前からエヌビディア製のプロセッサが多数採用されるなど両社は提携関係にあるが、今後はさらに関係を強化して生成AIの計算インフラを拡充していく。クラウドとAIプロセッサの最大手が手を組むだけに、今後生成AIの行方に非常に大きな影響力を持つと見られている。

ダークホース?マスク氏手掛ける「xAI」

Qの発表より若干早い11月4日、イーロン・マスク氏のスタートアップxAIも自主開発した「Grok(グロック)」と呼ばれる対話型AIをベータ版としてリリースした。このチャットボットはソーシャルメディアのX(旧ツイッター)上で提供されるが、月額16ドルのプレミアムプラス(上位料金プラン)会員のみが利用可能だ。また当初はアメリカやインドなど一部の国々から提供を開始し、その後対象国を拡大していくという。

グロックの特徴の1つは、Xの投稿からリアルタイムの最新情報に基づいて回答できることだ。またChatGPTやBardなどに比べ、よりユーモアに富んでエッジの利いた回答をするという。

ただ、最近マスク氏の挑発的な態度などが災いし、Xは広告主の離反に遭って苦しんでいる。同社は今後、従来の広告収入からプレミアムなど有料サービスへと収益の軸足を移していくとの見方もあるが、現在の難局を打開するほどの力がグロックにあるかどうかは定かでない。

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小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー

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こばやし まさかず / Masakazu Kobayashi

1963年、群馬県生まれ。作家・ジャーナリスト、KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院理学系研究科を修了後、東芝、日経BPなどを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。帰国後、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などを経て、現職。近著に「生成AI」(ダイヤモンド社)、「AIと共に働く」(ワニブックスPLUS新書)。

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