復興事業などの需要に伴い、
足元の業績は堅調に推移
日建工学の業績が堅調に推移しそうだ。15年3月期の連結売上高は87億1300万円と、前期に比べわずかな減少(3.0%減)となり、収益面では、人材の拡充や鋼製型枠の減価償却費が増え、営業利益3億5800万円(29.8%減)をはじめ、経常利益、当期純利益ともに減益となった。ただし、16年3月期には、それも改善し、売上高95億円(前期比9.0%増)、営業利益5億4000万円(同50.6%増)を予想している。予想売上高は過去最高だった2000年3月期の96億円に迫る勢いだ。
日建工学の主力事業は、海岸や河川の護岸のために設置される消波根固(ねがため)ブロックの製造用鋼製型枠の貸与、護岸や景観修景に関連する河川・道路・公園などのコンクリート二次製品の製造販売、土砂吸出防止・洗掘防止・遮水などの土木用シートの製造販売の3事業となっている。
次期の見通しの背景には、東日本大震災の復興事業および東海・東南海ならびに火山・砂防などに対する国の防災・減災対策事業などの国土強靱化政策の推進に伴い公共投資が増えていることが挙げられる。たとえば東日本大震災の被災3県では、海岸堤防、防潮堤工事に必要な消波根固ブロックなどの需要が高まっている。
ここで注目したいのは、消波根固ブロックを提供するビジネスモデルだ。日建工学に限らず、消波根固ブロックメーカーは一般的に、消波根固ブロックの鋼製型枠を所有し、その型枠の賃貸を主たる事業としている。
日建工学が公共事業に参入する場合でも、事業主体である官公庁との直接の契約を行わず、工事を受注した建設会社に型枠の貸与を行う。このため、型枠製造の初期投資や償却のリスクはあるものの、コンクリート製品の在庫を抱えることはないのだ。ちなみに、同社では消波根固ブロック以外の製品についても自社工場を持たず、全国各地の地域に密着した協力会社にすべて製造委託している。
技術開発を推進し、環境配慮製品など、
他社との差別化を図る
日本は険しい地形と急流の河川が多いことに加え、周囲を海に囲まれているため、災害が起きやすい特性がある。護岸工事などに使われるコンクリート製品のニーズは高く、国内市場も早くから発展してきた。
消波根固ブロックの品質は型枠で決まるが、その型枠製造において、日本は世界でトップクラスの技術力を誇る。海外製品の中には、設置後すぐに崩壊したり沈下したりしてしまうような粗悪な製品もあるが、“メード・イン・ジャパン”の型枠で製造されたものならその心配もない。
日建工学も設立以来50年以上にわたり、業界の高技術化をリードしてきた。ただし、国内においては、市場が成熟することで、工法や製品が標準化・汎用品化してしまうのも事実だ。このため、日建工学では、付加価値が高く差別化につながる製品開発を積極的に進めてきた。コンクリートであっても環境に配慮している製品や、景観が周囲の風景になじむ製品の開発でも、業界に先駆けた存在だ。
ヒット製品に「ラクナ・IV」と名付けられた消波根固ブロックがある。4本の脚体の集合部に4個のくぼみ状の穴を有するブロックだ。放射状のブロック形状でありながら、くぼみと脚先がかみ合うため、耐波安定性が向上するという特長がある。さらに、大きなくぼみが空隙率を高める。4本の脚体を持つ一般的な消波根固ブロックの空隙率は約50%だが、「ラクナ・IV」のそれは56.5%にも達するという。それだけブロックの所要個数を減らすことができるため、ブロックの製造コストだけでなく、施工のコストや工期も大幅に削減できると好評だ。
コンクリートにアミノ酸を混ぜた
「環境活性コンクリート」を開発
日建工学は、前例のない取り組みにも積極的に取り組んでいる。市場にインパクトを与えるとして、大きく注目されているのが、コンクリートにアミノ酸を混和した新素材「環境活性コンクリート」だ。日建工学、味の素、徳島大学の共同研究により開発されたもので、日建工学と味の素の2社で特許を保有している。「環境活性コンクリート」は、コンクリートにアミノ酸(アルギニン)を混ぜることにより、それがゆっくりと溶け出し、微細な藻の成長を促進する画期的な製品だ。これまで、全国の海や河川、約60カ所で実証実験を行った結果、コンクリートブロック表面の付着藻類の量が、通常のコンクリートの5倍~10倍に増加することが実証されているというから驚く。すでに魚礁や消波根固ブロックとして採用されている地域もあるという。コスト面での折り合いが付けば、今後、各地で採用される可能性がある。
アジアの社会資本整備プロジェクトに
大きなビジネスチャンス
新商品開発に加え、日建工学の将来的な成長の鍵を握るのが海外戦略だ。同社は2015年1月、ベトナム・タインホア省で建設中のニソン製油所建設プロジェクトにおいて、防波堤建設に使用される約2万4000個の「ラクナ・IV」を受注した。同社はもとより、日本の消波根固ブロック業界でも初の海外大型案件受注である。ニソン製油所は、出光興産、三井化学、PETRO VIETNAM、クウェート石油公社の共同出資による「ニソン精製有限責任会社(NSRP)」が運営するベトナム国内2つ目の製油所だ。完成すれば、ベトナムにおける石油消費量の約60%(20万バレル/日)を供給する製油所となるだけに大いに期待されている。
日建工学では2012年に同国ハノイ市に駐在員事務所を設立している。この拠点を中心に、ベトナムをはじめとするアジア諸国の社会資本整備に携わっていく考えだ。
日建工学は、現状に甘んじず次代を見越した技術開発や市場開拓に積極的に取り組んでいる。持続的な成長を果たす企業として、中長期的に注目に値する一社と言える。
TOP INTERVIEW
安定した企業収益を上げるために、
積極的な挑戦を続けていきます。
―― 「環境活性コンクリート」は、コンクリートにアミノ酸を混ぜることで、微細藻類や海藻などの生長促進が期待される画期的な製品です。異業種のコラボレーションにより誕生した点も興味深いところです。開発にあたってはどのような思いがあったのでしょうか。
行本卓生
行本 2008年ごろ、味の素の研究員の方から、コンクリートにアミノ酸を混ぜて製品がつくれないかと打診をいただいたのがきっかけでした。
コンクリートは配合比率が決まっており、異物を入れることはありません。このため、当社以外では「できるわけがない」と断られたそうです。ただ、私は「それは面白いのではないか」と感じました。消波根固ブロックはさまざまな機能や形のものが100種類以上もあります。ただし、製品そのものでできることや差別化には限界があります。私は以前から、革新的な変化を起こすには、コンクリート以外の素材の利用などが必要だと考えていました。
通常のコンクリートと変わらない強度を出すために、何百回もの実験を繰り返すことになりましたが、最終的に自信作をつくることができました。当社にとって、素材に踏み込む大きなきっかけにもなりました。将来的には、海や河川だけでなく、陸上の建設物でも「環境活性コンクリート」を使えるものにしたいと研究を重ねています。
―― ベトナムをはじめ、海外展開についても、業界で初めて本格的に取り組もうとしていますね。今後の成長戦略をどう描いていますか。
行本 海外においても、当社製品の優位性が発揮できると考えています。実は、ベトナムのプロジェクトでは当初、ヨーロッパ製品の使用が検討されていましたが、すでに設置されている製品の不具合による据え直しが頻繁に起きていました。このため、安定性や経済性に優れる当社製品に変更されることになったのです。
アジアでは今後、石炭火力発電所、製油所、天然ガス洋上液化プラント(FLNG)などのプロジェクトが、めじろ押しとなります。政府開発援助(ODA)や国際協力銀行(JBIC)関連の案件なども含め、当社が活躍できる舞台は広いと考えています。
現在、日系の総合商社、プラント・エンジニアリング会社などと連携しながら、現地でのネットワーク構築に力を入れています。また、アジア各国の大学や研究機関との共同研究などを通じて、当社製品の機能を検証していただくことで、国家の標準規格づくりの段階から関与できるよう活動を進めています。現地の大学の先生方やエンジニアの方々に「日建工学のものを使いたい」と言っていただける信頼関係をつくることが一番の近道だと考えています。
環境にも配慮した“日本発”の技術がアジアをはじめ、世界で使われるようになるといいですね。その先陣になるために、努力を続けていきます。
「日建工学は何か面白そうなことをやりそうな会社だ」と、引き続きご注目いただきたいと願っています。