「日本の入浴法」マネた"世界のスパ施設"驚く中身 サウナの国も「日本の風呂文化」に憧れを抱く?

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また、スパ内のラウンジやバーで提供される飲料水やビールタップにも、この自慢の湧き水が使われているそうだ。

とはいえ、日本人として気になってしまうのは湯の温度

40度という水温は、西洋諸国のスパや温泉の平均水温よりは熱めの設定だが(35度前後が主流)、極寒世界の露天風呂では、やはり少し物足りなさを感じてしまう。

だが、周りの客にヒアリングしてみると、皆一様に「ちょうどいい」「もう少しぬるめでもいいくらいね」という反応。

施設側のモニタリングの結果でも、やはりこれ以上熱いと不快に感じる人が増えるだろうとのことだった。

他国文化の再現が難しいのはお互いさま

どこの国でも、他国の入浴文化を輸入する際に、本場の最適温度をそのまま再現するのは簡単ではないようだ。

日本のサウナも、フィンランド人にはたいてい「熱すぎる」と驚かれる(フィンランドサウナの平均温度は60〜80度)、多くの日本人が高温を心地よいと感じている限り、いまさら簡単に室温を下げられないと日本の施設関係者もよく漏らしている。

また、ラハデは男女混浴なので、水着着用がマストだ。

水着で湯に浸かるというのは、我々日本人からするとなんとも落ち着かないが、混浴ならカップルでも一緒に入浴を楽しめるし、セクシャルマイノリティの人も気兼ねなく利用できるなどメリットも大きいので、仕方ない。

さらに、これはひょっとしたら逆に羨ましいと感じる日本人がいるかもしれないが、フィンランドではサウナ浴中に、ビールなど軽アルコールを自己責任で嗜む文化が根付いている。よってこのスパでも、ラウンジで購入したビールやカクテルを片手に湯船に浸かることができるのだ!

日本や東洋をコンセプトにした西洋のスパ施設では、唐突にブッダのオブジェが置かれているなど、それらしいビジュアルイメージにばかり重きを置く傾向がある。

けれどラハデでは、ともに森や自然資源への敬愛心が強く、質実剛健の心に美徳を感じ、成熟した入浴の伝統文化を持っているフィンランド人と日本人ならではの、精神的なシンパシーが入浴体験に活かされている気がした。

もちろん本場との違いを挙げればきりがないが、それはいつでもお互いさま。

フィンランド来訪の際は、ぜひパノラマホテルで、フィンランド人の思い描く日本の入浴観を追体験してみてほしい。

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こばやし あやな サウナ文化研究家、フィンランド在住コーディネーター、翻訳家

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Ayana Kobayashi

1984年岡山県生まれ、大阪・神戸育ち。2011年フィンランドに移住し、現地大学院で芸術教育学を学ぶ。「フィンランド公衆サウナの歴史と意義」というテーマで執筆した論文が学内最優秀論文に選ばれ、2016年にユヴァスキュラ大学修士課程を首席で修了。卒業後に起業し、通翻訳や現地コーディネート業務を続けるかたわら、サウナ文化のエキスパートとして、日フィン両国のメディア出演や講演活動、諸外国の浴場文化のフィールドワークを行なっている。2019年に『公衆サウナの国フィンランド--街と人をあたためる、古くて新しいサードプレイス』、2021年に『クリエイティブサウナの国ニッポン』(ともに学芸出版社)を出版。

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