中国による「工作機械の軍事流用」に日独で意識差 DMG森精機の製品が核開発に転用された疑い

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明星大学の細川昌彦教授も同様の見解を示す。細川氏は通商産業省(現・経産省)の官僚として、通常兵器などの輸出管理を行う国際的な枠組み「ワッセナー・アレジメント(WA)」の制定で交渉にあたった経験を持つ。

WAは5軸加工機の輸出を規制する枠組みの一つだ。ところが、その運用の内情を見ると、許可の基準は各国政府に判断が委ねられているという。

「ヨーロッパ諸国が冷戦期の国際的な輸出規制の枠組み『ココム』のような拘束を嫌い、裁量を持つことにこだわった。日本は明確なルールを作るよう主張したが、受け入れられず、結果としてあだになっている」(細川教授)

問題の背景に「懸念の違い」

問題は、中国に対する安全保障上の懸念が国によって異なることだ。

「ドイツは自国企業に対して、5軸加工機の生産工場を中国に作ることすら認めている。技術が流出する危険性を考えれば、日本ではありえない対応だ。日本政府は5軸加工機の輸出許可さえしておらず、基準を厳格化するようドイツ側に申し入れてきたが、まだ聞き入れてもらえていない」(同)

細川教授は「日本とドイツ、それにアメリカを加えた最低3カ国以上で、協調して審査する新たな枠組みを早急に作らねばならない」と提言する。軍民融合を進める中国に対して「民生用」と「軍事用」に分ける考え方もあまり意味をなさないため、「技術水準で一律に規制すべき」との考えだ。

細川教授の提言は、業界側の問題意識とも合致する。工作機械メーカーらでつくる「日本工作機械工業会」(日工会)。11月の定例記者会見で稲葉善治会長(ファナック会長)は、次のように述べた。

日本工作機械工業会の会見
日本工作機械工業会の定例会見で稲葉善治会長(左から2人目)に見解を尋ねた(撮影:編集部)

「(輸出に関しては)顧客の既存設備の使用状況を確認したり、責任者からの誓約書を取ったりするなど、日本は欧米メーカーに比べて非常に高いレベルの輸出管理を行ってきた」

「会員各社は、厳しい形で最大限の努力をしている。それに対して、ヨーロッパのほうが、日本ほどのしっかりとした管理はされていないと思っている。その辺に関しては、運用も同レベルというか、一致させたいというのが私どもの希望だ」

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