灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか

拡大
縮小

青松氏には、「医師への道はゴールまでのルートが決まっていて、そこを早く走れるかどうかだけを競っている」ように見えたと言う。それよりも、YouTubeと短歌という最も距離の遠い2つの表現方法を極めることのほうが、「おもろい」と彼は語ってくれた。

4 書影
『4』(ナナロク社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

その青松氏を、もう1人の脱落エリートである田内学氏が絶賛する。

ゴールドマン・サックス証券(GS)で採用担当もつとめていた田内氏は、YouTubeチャンネル「トマホークTomahawk」の動画で青松氏と共演している。GSでの採用試験を学力自慢のYouTuberたちに解かせる企画だったが、田内氏は正解数がもっとも少なかった青松氏を一番評価する。

「彼(青松氏)は、正解は少なかったが、間違えた問題もその本質を捉えていた。むしろ、想像力を働かせて、問題文の外側にある条件を読み取ろうとしたから間違えた。1つ高い次元で俯瞰しているようにも感じられた」

自分では「ソロプレーヤー気質」と分析する青松氏が、医師よりも高い次元で自身の能力を生かせるのが創作活動なのだろう。

大学を出てから16年勤務したGSを辞めた

田内氏は、東京大学、大学院とどちらもストレートで修了。得意の数学を生かすために、GSに入社して金利のトレーダーになった。彼もまたエリートコースを走り続けたが、16年間の勤務の末、突如、そのコースを自ら降りる。彼の決断の背後には何があるのだろうか。

「世界最強の投資銀行」に入った田内氏は、リーマンショックも乗り越え、精力的に仕事を頑張っていたそうだ。しかし、自分の仕事が“他人と交換可能な仕事”であると感じ、自身の存在意義について考えるようになっていく。17年目に休職し、子どもと一緒に『スプラトゥーン』や『フォートナイト』をして日々を過ごしながら、自分の生き方を見つめ直したそうだ。

最終的に退職を選んだのは、2人からの言葉がきっかけだった。

昔から交流のあった禅寺のお坊さんに言われたのは、「あなたの経験を社会のために生かしなさい」という言葉。それを聞いた田内氏は、国際金融の最前線で考えてきた年金や財政問題の解決方法について世の中に伝えたいと思ったそうだ。

とはいえ、何をすればいいかわからない。そのとき運命に引き寄せられるように知り合ったのが、カリスマ編集者の佐渡島庸平氏だった。

次ページ佐渡島氏の一言とは?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT