日米の政治経済を繋いだ、ある米国人の半生 慶應大学ジム・フォスター教授に聞く(前編)

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慶應大学政策・メディア研究科特別招聘教授のジム・フォスター氏(左)と筆者
日本企業が世界で勝てない理由のひとつに、各国政府への働きかけ、つまり「ロビイング」不足があります。日本が今、身に付けるべきロビイングの技術とは何か。今回は、米国国務省や日本マイクロソフトなど、米国と日本で官民を渡り歩いてきた慶應大学政策・メディア研究科特別招聘教授のジム・フォスター教授にお話を伺います。

日本の選挙は「圧力団体の勢力拡大の争い」

桑島:ジム・フォスター教授は現在、慶應義塾大学大学院の政策メディア研究科で教鞭を執っていらっしゃいます。その前は米国の国務省やマイクロソフトにもいらしたことがあります。先生の博士論文は日本の政治がテーマだったそうですが、どんなテーマだったのですか。

フォスター:日本の政治組織と圧力団体についてです。政党は政策を作るための団体ですね。しかし1980年代当時、日本の政党は成熟していないので、政策立案能力が低いという見方があったのです。自民党は後援会組織の集まりで、社会党は労働組合の言いなり。西洋諸国の政党と比べたら、どうも未熟であるから、日本の民主主義も未熟だと。

私はそれに対して、いやいや、そういうことではなくて、日本の中選挙区制に問題があるのだと反論しました。なぜなら中選挙区制があると各政党は自党の基本的な支持層を動員できれば、当選が可能になるからです。だから幅広い有権者にアピールする必要はない。

また、自民党は外からはバラバラに見えるけれど、中を見てみると、それぞれのグループがそれぞれの候補者と組んで、かなり組織力がありました。つまり日本の選挙は政策の争いというよりも、圧力団体の勢力拡大の争いです。それが私の卒論の主張です。

桑島:そして大学院卒業後は、政党の政策をPRするパブリック・リレーションズ・ファームに入られたんですね。

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