親の介護で昇進を断念、悲観せず何ができるか 思い通りにならない現実で気づける視点もある

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そして、ここが最も重要なところですが、会社の仲間たちに、介護とは何か、伝えられる存在になっていきたいところです。

可能なら、ロールモデルとして、会社内の介護の知識(エイジング・リテラシー)を高めるために、経営者や人事部に協力できたら最高です。それによって、いつかはまた、管理職への道も開けるかもしれません。

仕事と介護の両立は、かなり大変です。ビジネスケアラーとしてうまく両立していくことは難しいことかもしれません。ただ、仕事と介護を同時にこなしているからといって、死ぬわけではありません。

仕事の専門性を高めながら、介護そのものについても学び続けていくことが、私たちが具体的にできることのすべてです。悩んでも仕方がないことなのです。

不運を嘆いても、未来は変わりません。自分でコントロールできることを、しっかりとコントロールすることで、開けてくる世界もきっとあるはずです。

ビジネスは人生のほんの一部

人工知能の世界にはフレーム問題という言葉があります。これは、人工知能は特定のフレーム(枠組み)で囲われている範囲でしか機能しないことを示したものです。

例えば人工知能は、将棋のルールを与え、勝つことを目標とさせてはじめて機能しはじめます。しかし人工知能は、計算の前提となるルールや目標を、自らの力で生み出すことはできないのです。

このフレーム問題は、何も人工知能の世界でだけ有効な概念ではありません。私たち自身も、親の介護が始まるまでは、ビジネスというフレームの中にしかいなかったのではないでしょうか。

そして人生の設計を、このフレームに沿って最適化してきたはずです。眠い目をこすって勉強をしてきたのも、似合わないリクルートスーツに身を固めたのも、すべては、このビジネスというフレームへの最適化のためでした。

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