40歳で離婚、福祉に頼りながら幸せに生きる女性 「専業主婦という名の"ひきこもり"だった」

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「通院していた精神科ではうつ病と言われていましたが、うつ病がなかなか良くならず、新薬を試したら治るのではないかと期待を抱いて治験のできるクリニックに変えました。ところが、治験薬の副作用でだるくて寝たきりの状態になってしまい、それを見かねた母が心配してきたんです。それをきっかけに障害者手帳を取得しました。

さらに母に問いただしてみると、すでに40年前に発達障害の診断が下りていたと言うんです。当時は発達障害という言葉はなかったので、微細な脳の損傷のある子どもとされていたようです。もっと早く教えてくれていたらまた違った選択ができたのにと思いました。でも、思い切って治験でクリニックを変えたことはとても良かったです。あのまま、前の病院にいたら、今でもうつでずっと苦しんでいたと思います」

発達障害の当事者会に参加するように

原口さんは発達障害のせいで家事がうまくできず部屋がゴミ屋敷と化していたのだ。それから発達障害の当事者会に参加するようになり、情報を得て障害年金の受給や、障害があることから格安でヘルパーを利用できることを知った。週に何度かヘルパーに来てもらうようになり、ゴミ屋敷だった部屋はみるみる片付いていった。下町で一人暮らししている部屋は家賃が安く、元訪問看護師の大家さんも原口さんに良くしてくれた。

「苦しかったのは収入が少ないのに娘に養育費を月2万5000円払わないといけなかったことです。休職中の傷病手当金や預貯金を切り崩してなんとか養育費を捻出していました。養育費は払っていましたが、最初の頃は娘に会えていませんでした。娘に会えるようになったのはその数年後です。

どうやら娘は中学校を不登校だったようです。高校生になった娘は漫画やアニメなどが好きで、年2回行われるコミックマーケットで買ってきてほしいものを頼まれたのがきっかけにまた娘と会うようになって、コミケに足を運びました。私も恩返しのつもりでコミケのスタッフをやりました。不登校だった娘ですが、有名大学に通って就職も果たし、とても優秀です」

経済的に苦しいのなら生活保護を受ける手もあるのではないかという質問には、実は離婚時に財産分与で手に入れた預貯金が1000万ほどあるため生活保護は受けられず、その預貯金の一部を資産運用しているという。

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