熱心な人ほどこの「ダメな勉強法」で失敗している ちまたにあふれる「効率的なやり方」こそ危険

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学生を2つのグループに分けて行った実験があります。

まず、1つ目の学生グループに教科書を1章分読ませて、1時間勉強させます。2日後にまた来てもらい、再び同じ章を読んで勉強させます。その2日後にまた研究室へ来てもらって、内容についてのテストを受けさせます。

フラッシュカードをつくって覚える

2つ目の学生グループでは、1回目と3回目の集合時に行うことは同じなのですが、2回目の集合時には勉強の代わりに内容についてのテストを受けさせます。このテストの問題は最後に行うテストとは異なるものですが、同じ範囲を対象としたものです。

すると、2回目の集合時にテストを受けた学生は、2回目の集合時に勉強をした学生に比べ、最後のテストの成績がおよそ10~15%よくなるのです。

これを「想起練習」といいます。想起とは、記憶から情報を取り出すプロセスのこと。何かを想起することによって得られる効果は、この実験からも明らかでしょう。

想起練習は、年齢や被験者を問わず有効ですが、注意すべき点が2つあります。

第一に、フィードバック。学習のためにテストを受ける場合は、自分が正答できたかどうかをすぐに確かめる必要があります。思い出せなかった場合や正しく答えられなかった場合は、すぐさま正しい答えを自分の記憶に植えつけてください。

第二に、想起練習が効果を示すのはテストを行った内容だけ。たとえば、ピョートル大帝に関する文章を読む場合、そこに大帝に関する事実が30個書かれていて、そのうち10個がテストの問題になったとしたら、その10個に関する記憶は向上しますが、あとの20個には効果がありません。

また、想起練習は効果的なのに、効果がないように感じてしまう勉強法だということ。ぜひ覚えておいてほしいのは「大きな課題に取り組むほど、長い目でみれば力がつく」ということです。

想起練習を活かすには、フラッシュカードを大量につくって1セットにするのがおすすめ。効率的に勉強できるだけでなく、知る必要のあることすべてを1カ所に集めることができます。

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