膵臓がんを知った50代独身女性が「やり始めた事」 独身・既婚に等しくある「おひとりさまリスク」

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子どもが産みづらくなった年齢を迎える頃には、気持ちはかなり沈みがちになりました。婚活をしたこともありましたが結局続かず、さらに仕事に注力する毎日となっていきました。

そんななかで、想像もしていなかったコロナウイルス。仕事も、完全リモートの日々。誰ともしゃべることなく、気分転換に外出する気にもなれず、気持ちはどんどん落ち込みます。

ふと気が付けば、祥子さんには何気ない雑談をする友だちがいませんでした。これはコロナの事態となって、初めて気がついたことです。今まで仕事にばかり目が向いていた毎日でした。ここからはもう少しプライベートで、人とのつながりを持っていこうと決めました。

リモートの生活が続くなかで、祥子さんは自分の体重が減っていることに気が付きました。人の目がなくなって太ったという話はよく聞きますが、通勤で体を動かすこともなくなって、なぜ体重が減るのかしら……と不思議でしたが、そういえば動いていないせいか、食べる量が自然と減っていたのかもしれません。

ダイエットもなかなか成果が出なくなった年代だったので、出社したときにはまわりに驚いてもらえるかもしれないと、少しうれしい思いもしたのです。

受診の結果はまさかの…

ところがさらに食欲は減り、体重はまた減っています。さすがにおかしいと思い病院へ行こうと思いましたが、医療現場はコロナで大変な状況。もうちょっと様子を見ようと、二の足を踏んでしまいました。

「すい臓がんです」

それから1カ月後。自分でも体調不良を感じ、ようやく病院を訪れ検査の結果で耳にした言葉です。しかもかなり広範囲に、転移しているとのこと。手術もできない状態でした。

「余命は半年です」

水の中で音だけがこぼこぼと遠くから聞こえているような感じでしたが、頭ではすぐにその言葉を理解することはできないような衝撃でした。

事務局の方が、入院する際の手続きを説明してくれました。身元保証人がどうのこうの……。どのような役目かもわからず、家に戻って調べたほどです。それより入院したら、もうこの部屋には戻って来られないのでしょう……。質素な生活だったので物は少なめでしたが、今からこれを片付ける体力的な余裕もありません。

かといって、しばらく会っていない弟家族に、任せたくもありません。小さな頃にあんなに可愛がった甥っ子たちも、今では立派な社会人。忙しくしていることも、目に見えています。

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