JR四国「瀬戸大橋」、海の真上の保守作業に密着 開業から35年、塩害対策や強風が悩みの種

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瀬戸大橋線での作業はその場所柄、風速10m以上で作業禁止となるほか、橋下には人家や船の往来があるため、落下物に細心の注意を払う必要があり、ペンなどの携行品は落下防止のためにひもが取り付けられている。筆者も「取材中はカメラのレンズ交換を控えるように」と指示があった。

作業の打ち合わせが終わると瀬戸大橋を構成する北から5番目にあたる北備讃瀬戸大橋へ上るべく、与島パーキングエリアからしばし歩いて、橋の袂へ。「BB1A」(Bisan Bridge 1 Anchorageの略。1は最も岡山寄りであることを示す)と呼ばれる設備に入ると中は吹き抜け構造のようになっている。なお、瀬戸大橋内の作業は、必要に応じて瀬戸中央自動車道を運営するJB本四高速(本州四国連絡高速道株式会社、本州と四国を連絡する自動車専用道路等の維持、修繕、料金収受などの管理を行う)との調整の上で実施される。

業務用エレベーターに乗り、階段を上がればそこはもう鉄道階だ。そしてここに瀬戸大橋ならではの設備がある。吊り橋構造の北備讃瀬戸大橋は、鉄道車両の荷重がかかるとその重量で大きくたわむ。その変量を吸収する「緩衝桁」とそれに伴ってレールのつなぎ目を調節する「軌道伸縮装置」がここに備わっているのだ。もちろん、列車走行中に実際の橋梁部を見ても、見た目でたわみがわかるような大きな変化はない。

足元には青い海、「今でも怖い」

今日の作業は2年に1度実施されている全般検査の一環。担当するのは高松に拠点を置く、JR四国土木技術センターだ。本四備讃線の保守には土木構造物を管理する土木技術センターのほか、線路を管理する高松保線区多度津駐在、電気設備を管理する高松電気区多度津駐在がかかわる。

本四備讃線の土木建造物に係る全般検査は2年に1回のペースで行っているが、線路の徒歩巡回等もあり、「保線、土木、電気でそれぞれ定期的に検査、巡回をしている」と土木技術センター須賀基晃検査技師は話す。

BB1Aを出て線路に沿うように設置されているJB管理路を通って宇多津方面に向かって歩く。与島上空を離れると眼下は海だ。床はグレーチングと呼ばれる格子状で、足元の隙間からは青い瀬戸内海がよく見える。作業に当たる社員らに高さへの恐怖はないかと尋ねてみたところ、「配属当初は怖かったが慣れた」、「仕事として割り切っている」、「正直いうと今でも怖い」といった声が聞かれる。

一方で「下に地面が見えている場所ではより怖く感じるが、いったん海面に出ると意外に恐怖感が薄れる」という声もあり、実際のところ筆者も同じような感覚を覚えた。なお、この通路は時折開催されるJB主催の見学ツアーに参加すれば、一般者でも通行体験ができる。

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