日経平均の「2つの懸念」が解決するのはいつか 米国株の「クリスマスラリー」はほとんど確定的

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ただし、日本のデフレ脱却相場(インフレ相場)はまだ完成していない。銀行など大型バリュー株の柱が倒れることもないと思っている。つまり個人投資家も喜ぶ「2本立ての強力な相場」が予想される。

日経平均をとりまく「2つの懸念」は「時が解決」

また、私は市場にとっては良いことだと思っているが、今ここで日経平均が一気に上値を取れない理由が2つある。1つ目は移動平均線との乖離率、2つ目は予想PER(株価収益率)の水準だ。

約1カ月前から振り返ると、10月26日の日経平均は668円安の3万0601円78銭だった。市場には、底抜けのリスクが高まり、筆者の「正念場」の声もカラ念仏に聞こえていたはずだ。しかし、この日の移動平均乖離率は「25日」が-3.47%、「75日」が-5.04%で合計乖離率は-8.51%となって、「陰の極」が待っていた。

結果はどうだったか。同月27日が389円高と、わけのわからない上昇になったあと、一気の約3000円高だ。しかし11月15日(3万3519円70銭)時点では、25日移動平均乖離率が+5.23%、「75日」が+4.23%で、合計乖離率は+9.46%と、10月26日とまったく逆バージョンとなった。つまり、陰極まってからの強烈な上げを目の当たりにした投資家は、今度は「陽極まってからの急落」を心配して、上値買いをためらっている。

2つ目のPERはどうか。あのアベノミクス相場でも東証1部の平均PERは約15倍だった。今回、東証プライム市場も15倍を超えると上値が重くなるのは、投資家の当然の心理だ。

筆者は、この2つともまったく問題はないと思っている。前者の移動平均線からの乖離率の大きさは、相場が急激に動かなければ、勝手に正常化する。ゆっくり上げればいいだけだ。後者のPERも、プライム市場に上場している企業の利益が上がれば、自然に下がる。

2023年3月期が終わった時点で、今24年3月期のプライム銘柄の純利益見通しの平均は3.0%の増益だった。だが、第1四半期が終わったときの見通しは6.3%増益、そして第2四半期が終わった今回は12.4%増益と増益率が改善している。まさに倍々ゲームだ。

今後どうなるかは断定できないが、現在の予想為替レートの平均はあがったとはいえ、1ドル=約137円で、24日の1ドル=149円台に対して約12円もの円安だ。このままなら、第3四半期時点での同純利益は最低15%の増益になると思っている。
そして命運をかける岸田政権の大型補正等の経済対策で、最後の第4四半期も急速に失速するとも思えない。自信を持って「下がれば買い」と言いたい。

さて、今週(11月27日~12月1日)は、12月12~13日開催のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)を前にして、金融当局要人の発言が許される最後の週である。データ次第でその都度決めるとしているFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策、同国のPCE(個人消費支出)デフレーターをはじめとして、重要な指標が注目されるが、株式市場は日米ともにゆっくり盛り上がることを期待している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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