前例なし「M-1グランプリ」誕生の知られざる舞台裏 ミスター吉本「漫才を盛り上げてほしいんや」

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そんなこともあり、世間話のつもりで「いま、漫才プロジェクトというものをやっていて、漫才を盛り上げるために動いています」と話したのだ。すると、聞いていた紳助さんが真剣な目をしていることに著者は気づいた。

ぼくが話し終えると紳助さんは真顔で言った。
「それはええことやわ。絶対やらなあかんことや。しっかりやってや」
紳助さんが心の底からそう思っていることは真剣なまなざしから伝わってきた。(58ページより)

漫才ブームの火をつけたフジテレビの「THE MANZAI」において、紳助・竜介というコンビが先頭を走っていたのは有名な話だ。一度も休むことなく全回に出て、毎回新ネタをつくってきたのだという。たしかにあのころは、テレビをつければ紳助・竜介が画面に映し出されるといった感じだった。

紳助・竜介の影響を受けて同じような漫才をやる新人がたくさん出てきたのは、むしろ当然のことであったわけだ。大学時代に紳助・竜介を初めて見た著者にとっても、それが吉本に入る遠因であったようだ。

金の力で漫才師の面をはたくんや!

紳助さんは、著者に「若手の漫才コンテストをやったらどうや」と提案する。似たようなコンテストはたくさんあるのだから平凡だと感じたものの、それでも紳助さんが話すと魅力的に思えたと振り返る。

しかも、後日また会った際に紳助さんは、さらに著者を驚かせる提案をしたのだった。

「優勝賞金を1000万円にしよう!」
「1000万!」
「そうや、優勝したら番組に出してもらえるとかいうあやふやなもんやない。金の力で漫才師の面をはたくんや!」
紳助さんはにやりと笑った。(65~66ページより)

若い漫才師の多くは貧乏なので、たいていアルバイトをしている。アルバイトの合間に漫才をやっているような漫才師も少なくなかったようだ。そんな漫才師にとって、1000万という賞金は夢のような額である。

「今まであったようなもんやない。漫才のガチンコ勝負や。K-1のようなガチンコの大会にするんや」
「漫才やからM-1ですね」
「そうや、M-1や」
こんな風にタイトルはM-1に決まった。(67ページより)
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