人間最大の強みの1つが「忘れること」だと思っています。
嫌な思いとかつらい思いは引きずっていると、どんどん沈殿していきます。とくに、人に迷惑をかけたことは、よほどの心臓の持ち主でない限りずっと引きずってしまいますし、また迷惑を受けたほうもそれを繰り返し言ったりすることで、負のスパイラルに陥ってしまいます。
いつまでも双方あるいはどちらか一方が気にしていると、お互い付き合いづらいわけです。心に棘が刺さったようなものです。
「忘れたふり」も気くばり
忘れたふりでもいい。ふりをずっと続けていると、本当に忘れます。
これには私にも苦い経験があります。ある人に自社の経営諮問委員会の委員を頼んだのですが、こちらの都合で3回も日程を変更。とうとう3回目には大変怒られてしまいました。
もちろん、当初快く委員を引き受けてくれた人に対して、欠礼が3回にも及んだことがその人の怒りの原因ですが、そもそも怒りのスイッチが入ってしまった責任は、私にありました。
私が会社の代表としてお願いしたにもかかわらず、日程変更の理由を他責にしてしまったからです。
電話口で4時間ほど怒られました。これはマズイと思い翌早朝、その人のオフィスに出向き謝罪、そこでまた3時間ほど怒られました。最後にはもう「出ていけ」ということで、その人との関係性は切れてしまいました。
ところが、5〜6年後にその人からいきなり電話がきて、また怒られるのかなとビクビクしながら電話に出たのですが、至って平静で、私がその節は……とお詫びを入れると、「そんなことあったっけ」と。
そのあと、会食しているときも、あの話にはいっさい触れられませんでした。「忘れたふり」をしてくださっているんだなと、以降、その話はしないようにしました。
この一連のことで、その人からすごい気くばりをしていただいたな、と思っています。その人は「自分は本気で相手に向かう、だから相手から本気で返ってこないと、自分も本気は出さない」といつも言っておられます。
本気で接する相手に対して本気の気くばりが“忘れる”ということなんだなと、そう思いました。
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